【本の感想】吉田修一『東京湾景』

吉田修一『東京湾景』

自分の周囲の恋愛事情を横目で窺うと、恋に焦がれてとか、恋に身をやつして、というのをあまり見かけません。まぁまぁ気が合うからお付き合いをし、頃合いが良いから一緒になる、というパターンが多いように思います。湿度の高い恋愛ドラマなど見ると、それはそれで面白いのですが、それはステキなお二人だからだよねっとシラケてはいます。まぁ、自分ぐらいの歳で愛だ、恋だと騒ぎ立てたら、皆さんに気味悪がられるのは必定ですから。

吉田修一『東京湾景』は、恋しくて愛おしくてを全く感じさせません。

品川埠頭の倉庫街で働く亮介は、携帯サイトで出会った涼子に心惹かれます。ぶっきらぼうな初対面から、徐々に距離を縮めていく二人。しかし、涼子はお台場のOL美緒が名乗った仮初の姿でした・・・

本作品は、東京湾を挟んだ品川埠頭とお台場で、ワークスタイルやライフスタイルが全く異なる男女のラブストーリーです。亮介と美緒、それぞれの日常が交互に描かれているのですが、接点を持つはずのない二人が、胡散臭い出会いをきっかけに、人生のひと時を重ねていくという展開です。

亮介と美緒には、胸焦がれるほどの思いを感じません。それぞれ満たされない何かを抱えている二人の、どこか乾いた部分が、かえってリアルさを感じさせるのです。

本作品では、二人の周辺の人々が、味わいを深めてくれます。亮介をモデルにした、作家 青山ほたるの雑誌掲載の連載小説が、やんわりと二人に気づきを与えているようで面白いですね。

お約束どおり、亮介も、美緒も二人の関係に躊躇いを持ち始め、そして・・・ と続きます。途中から、上手くいかなさ加減をどう決着させるのか、が興味の中心になってしまいました。自分は、本作品の締めくくり方しては、これ以上のものはないと思うのですがどうでしょう?

恋に焦がれてがなくなったのは、傷つく前に白旗を上げているのかもしれなぁ・・・と思ったりして。だから、小説とか映画で溜飲を下げるのだよな。

本作品が原作の、2004年放映 仲間由紀恵、和田聰宏、佐藤隆太 出演 ドラマ『東京湾景〜Destiny of Love〜』は、こちら。随分、ストーリーを変えてしまったようですね。

2004年放映 仲間由紀恵、和田聰宏、佐藤隆太 出演 ドラマ『東京湾景〜Destiny of Love〜』
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