【本の感想】吉田修一『太陽は動かない』

本の感想 吉田修一『太陽は動かない』

ラグビーワールドカップが大盛り上がり。

普段は全くスポーツ観戦をしないのですが、サッカーワールドカップや、ワールドベースボールクラシックのようなイベントになると熱狂してしまいます。そんな自分のようなニワカな人は多いのだろうけど、根底にあるのは、なんだかんだ言っても「ニッポンダイスキ!」だから。

吉田修一『太陽は動かない』は、機密情報という金鉱を探りあて、高値で売りさばくことを生業とするトレジャーハンター(かな?)たちの活躍を描いています。エスピオナージ+冒険小説+ハードボイルド+(ちょっぴりだけ)恋愛小説という贅沢な逸品です。

各国の利権が渦巻く次世代のエネルギー革命。手にした情報の帰趨によっては、日本は圧倒的なダメージを被ってしまうという設定です。テーマが旬なだけに、実にリアル。リアルであるがゆえに、自分の「ニッポンダイスキ!」にポっと火を着けます。トレジャーハンターたちが、国益を第一に考えていないことろが、どうなっちゃうの感を強めていくのです。ページターナというべきでしょう。漂う疾走感との相乗効果で一気に読ませてくれます。

本作品が良いのはテーマだけじゃありません。主人公の鷹野、そして部下の田岡の属する組織=AN通信は、統制をとるため諜報員に爆弾を埋め込み、毎日正午に連絡がなければ爆発させてしまうのです。この制約からうまれる緊張感が全編を通して効いてきます。

そしてキャラクター設定の妙。暗い過去のあるストイックな鷹野、素行不良の田岡、韓流スターばりの諜報員デイビッド・キム、ウィグル反政府過激派組織の女首領 シャマル、民主党の一回生議員五十嵐と秘書丹田のデコボココンビ。そして、謎の美女AYAKO ・・・。トンガリまくる登場人物たちが、ホーチミン、上海、天津、香港、空へ海へと駆け巡ります。敵かな?味方かな?という彼らのライバル関係も面白いですね。ピンチになると、あ~、やっぱりここで助けにくるんだね、とわかっていながらホロリとなるでしょう。そういえば、原作のルパン三世ってこんなのだったよなぁ。AYAKOなんて、ふじこちゃん まんまだし。

本作品だけでは、AN通信や登場人物達の謎は解決しきれていません。このテンションを保っての2作目以降はハードルが高いのですが、ハテサテ。

さて、自分にとって一番の謎はタイトルの「太陽は動かない」です。田岡が鷹野にいう、

 ・・・鷹野さん、あんた、何のために生きてるんすか?死にたくないから生きてるんすか?ただそれだけなんすか!

のとおり、鷹野や、デイビッド、AYAKOらの生きていく信念のようなものを表象しているように思えます。 どうでしょう?

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