【本の感想】フィリップ・カー『砕かれた夜』

フィリップ・カー『砕かれた夜』(原著)

フィリップ・カー(Philip Kerr)『砕かれた夜』(The Pale Criminal )(1990年)は、ベルリン・ノワール三部作 私立探偵グンターものの第2弾です。

本作品は、ナチス政権下のドイツを舞台としたハードボイルドであり、この社会情勢が制約となってスリリングな物語が展開する、自分のお気に入りのシリーズです。

『偽りの街 』から2年、ナチスの専横が顕著となってきた1938年のドイツ。ドイツ人少女連続殺人事件の解決のため、親衛隊の実力者ハイドリッヒから刑事の復職を命じられたグンターは、調査をすすめるうち、政局をまきこんだ陰謀に巻き込まれます・・・

”水晶の夜”(ドイツの各地で発生した反ユダヤ主義暴動)前夜を描く、探偵ものということになるでしょうか(グンターが刑事に復帰したので警官小説かな)。冒頭、犠牲を払ってグンターが解決する同性愛者恐喝事件が、連続殺人事件と微妙に絡んでくる仕掛けになっているのですが、不自然さは感じられません。歴史的な背景、人物を上手く取り入れて、なかなかに読み応えがあります。徹夜本のような大傑作というわけではないけれど、このシリーズは抜群の安定感がありますね。

ナチス台頭下にあって、グンターが清廉潔白な正義の人というわけではない点が気にいっています。シニカルなジョークも前作に引き続き健在です。

前作で謎であったグンターの恋人(?)失踪事件が、調査の過程で悲しい解決を迎えるのですが、ここは無理やりかなぁ。

(注)読了したのは新潮文庫の翻訳版『砕かれた夜』で、書影は原著のものを載せています。

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