2020年3月27日 / 最終更新日 : 2021年1月4日 レペ 国内小説 【本の感想】泉鏡花『高野聖』 旅僧の夜語りから始まる怪異譚です。あらすじを知っていても度々読みたくなるのは、幻想世界への誘いが強烈だからでしょう。イマジネーションに身を委ねると、ひりつく暑さの中での匂い立つような淫蕩さが、五感を刺激します。これぞエロチズムですね。
2020年3月26日 / 最終更新日 : 2020年9月24日 レペ 国内小説 【本の感想】玄侑宗久『中陰の花』 生と死の中間の領域、つまり中陰をテーマにした物語です。観念論的な世界観を受け入れきれない僧侶と、彼の対極にある妻とのひと時が描かれています。読後は、ふわりと優しさに包まれたような静謐さに、心地良さすら感じるでしょう。
2020年3月23日 / 最終更新日 : 2021年1月14日 レペ 国内小説 【本の感想】上田早夕里『美月の残香』 双子の姉妹の悲劇を描いた作品です。ホラーなのか、ミステリなのか、はたまた奇妙な味なのか。読み進めながらもなかなか明らかになりません。複雑な恋愛模様を絡めて、どうする、どうなると、良い意味でイライラが募ります。
2020年3月21日 / 最終更新日 : 2021年1月14日 レペ 国内小説 【本の感想】笹沢佐保『人喰い』 誰かが誰かを陥れながら生きていくということ、つまり人が人を喰うという生き様がテーマの本格もの。火薬庫を使った派手な爆殺や、不可能犯罪を盛り込みながら、巧みに読者をミスリードしてく著者の妙技を堪能できる作品です。
2020年3月18日 / 最終更新日 : 2021年1月13日 レペ 国内小説 【本の感想】薬丸岳『刑事の約束』 『刑事のまなざし』、『その鏡は嘘をつく』に続く、刑事 夏目信人シリーズの第三弾。これまでの登場人物たちが顔を出す、ファンには嬉しい短編集です。『刑事のまなざし』の問題作「オムライス」の後日談であるタイトル作「刑事の約束」は、さらに重い内容となっています。
2020年3月11日 / 最終更新日 : 2022年4月2日 レペ 国内小説 【本の感想】長嶋有『タンノイのエジンバラ』 こはなとなく寂しさが漂う短編集です。どの作品の背景にも不倫があるからか、当事者や周辺の人々の痛みに感じ入ってしまいます。殊更に暗くはありませんが、直截に描かれていないことを想像するとキュンとなりますね。
2020年3月8日 / 最終更新日 : 2020年12月23日 レペ 国内小説 【本の感想】麻耶雄嵩『あいにくの雨で』 卒業を控えた三人の高校生を描く青春ミステリです。この手のミステリにありがちな青臭さはあるものの、成長の側面は屈折して描かれているので、感慨深いものがあります。読了したときの、苦味を伴なった切ない余韻が良いですね。
2020年3月6日 / 最終更新日 : 2020年12月23日 レペ 国内小説 【本の感想】綿矢りさ『ウォーク・イン・クローゼット』 恋愛至上主義女子のささやかな成長物語です。対男用のモテファッションで武装し、失敗を繰り返すこと度々、という主人公の生き様に図らずも共感してしまいます。自身の身の丈で、女子が精一杯生きてる感は、洗濯したてのカラフルなお洋服のようです。
2020年3月4日 / 最終更新日 : 2021年1月19日 レペ 国内小説 【本の感想】柚木麻子『ナイルパーチの女子会』 エリートの独身女子と主婦ブロガー、友達のいない彼女たちが、人と人との距離を測りかねて空回りていく様が描かれています。女心の抉り方が容赦なしですね。快活な柚木麻子節が恋しくなってしまいました。
2020年2月27日 / 最終更新日 : 2020年12月23日 レペ 国内小説 【本の感想】小杉健治『原島弁護士の愛と悲しみ』 著者のデビュー作を含む短編集です。収録作品は、どれも日本的な情感溢れるもので、ラストのヒネリが効いています。『絆』の原島弁護が登場するタイトル作は、正義の解釈次第ですが、なんともやるせない物語となっています。