【本の感想】柚木麻子『ナイルパーチの女子会』

本の感想 柚木麻子『ナイルパーチの女子会』

ナイルパーチ (Lates niloticus) は、スズキ目アカメ科に属する魚類。アフリカ大陸熱帯域の川、塩湖、汽水域に生息する。全長193cm、体重200kgの記録がある大型の淡水魚として、現地では商業上重要な食用魚であり、多くがヨーロッパや日本に輸出される。観賞魚としても人気が高い。

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柚木麻子作品には、怖い女が登場するものがいくつかあります。例えば、『けむたい後輩』の真美子、『嘆きの美女』のユリエ、『BUTTER』のカジマナ(リンクをクリックをいただくと感想のページへ移動します )。一見無垢、しかしながらその心の内には、ダークサイドというべき寒々しさを抱えています。読了時に、アッコちゃんシリーズのような爽やかな前向き感を得る事はありません。

『ナイルパーチの女子会』の志村栄利子も同様にダークな女子です。

栄利子は、商社に勤務する30歳のシングル。父親も同商社のOBで、大きな仕事を任されている恵まれたキャリアウーマンです。

栄利子が熱中しているのは、ハンドルネームおひょうの主婦ブログ。おひょうの赤裸々な日常をいつもウォッチしています。子供の頃から、どう頑張っても友達ができない栄利子は、おひょうの熱烈な信者と化していました。そして、ある日、栄利子は、おひょう こと丸尾翔子と出会うことになるのです。

物語は、栄利子と翔子の視点が切り替わって進みます。

翔子は、ブログが脚光を浴びていることから、夫賢介との生活にブロガーとして活動が侵食し始めています。SNSになんでも写メを載っけちゃうのです(あ、自分もか)。家庭生活に暗雲立ち込めるのが目に見えますね(あ、自分も..)。出版社の勧めで知り合った有名セレブ主婦ブロガーNORIらの影響で、翔子のブログの内容は親しみ易さからお上品な方向へと変わっていきます。

ところが、栄利子は翔子の変節を許しません。強制的に翔子を親友化(!)した栄利子は、執拗に翔子に粘着し、自身の思うがままの おひょうを取り戻そうとします。この件が、実に怖い。栄利子が翔子の秘密を握ってからは、予想通り崩壊に向けて一直線です。栄利子が強いるように企画した翔子の箱根二人旅は、一触即発の緊張が続きます。

本作品は、栄利子と翔子の二人の関係性に焦点が当たっています。それに加えて、栄利子が引きこもりに追い込んだ幼馴染 小笠原圭子、栄利子が自身の価値を確認するために関係を持った杉下康行、そして杉下の婚約者 真織、翔子の秘密の告白に言葉を失くす賢介、義理の母に見限られ孤独のまま倒れた翔子の父、といった陰々滅々な人間模様が浮き彫りになります。

中でも従順だと思っていた派遣社員 真織の栄利子への啖呵は激烈です(彼女の結婚観は如何?)。超現実主義の真織が栄利子を木端微塵する件は見所でしょう(ここにも怖い女が!)。

栄利子のストーキングに音を上げる翔子。しかし翔子もまたNoriに纏わり付くようになります。本作品は、人と人との距離を測りかねて空回りし、躓いてしまう女子たちが描かれています。本作品の女心の抉り方は、容赦なしです。快活な柚木麻子節が恋しくなってしまいました。

ちなみに、ナイルパーチはスズキの代用品ですから、タイトルが何を示唆しているかは自ずと分かりますね。

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