【本の感想】柚木麻子『早稲女、女、男』

本の感想 柚木麻子『早稲女、女、男』

柚木麻子『早稲女、女、男』は、早稲田女子を中心に展開される女子大生たちの恋愛事情とその周辺(?)、を描いた連作短編集です。

本作品集は、早稲田、慶応、立教、学習院と、女子大生を類型化して主役に据えています。彼女らの恋愛模様から、それぞれの出身大学の個性を特徴づけているのが楽しいですね。

読み進めていくうちに、自分の先輩・後輩、同期の女性らの顔が浮かんで、なるほどとなりました。確かに、新入社員の頃のワセジョの先輩は男勝っていて物凄く怖かったし、慶応女子は、堅実に同級生と結婚して3年目ぐらいで寿退社したのでした。本作品のエピソードにある通りです。

ただ、自分よりも、自分と同じく地方出身の女子の方が、敏感だったのかもしれません。同期の津田塾とか上智のコに対し、「なんか、違うわぁ」と呟いていて、ん?となったのを思い出しました。あれから35年を経て、はてさて、彼女たちは、どのようなおばちゃんになったのかな。

■愛の魂正義の心
早稲田教育学部 早乙女香夏子は、カレシ長津田とくっついたり別れたりの四年間。永和出版に就職が決まった香夏子は、先輩社員の吉沢さんにアプローチされ、そして長津田は日本女子大(ポン女ね) 本田麻衣子と良い仲に。それでも香夏子は、長津田と別れることができません。

そんな姿が香夏子の良き相棒、立教大学 立石三千子の視点で描かれます。 香夏子の煮え切らなさは、ある意味、男の女々しさにさも似たり。

■匂うがごとく 新しく
長津田にフラれた麻衣子。そして、香夏子にフラれた長津田。そんな長津田は、書店のサイン会場へ麻衣子を伴って、香夏子を訪ねます。幼稚な駆け引きが展開されるわけですが、麻衣子は、直接、香夏子に長津田への思いを打ち明けるのでした。

ポン女の同期 相沢美奈子と、サークルオーデイションを巡って鞘当てをするエピソードは、麻衣子が自分らしく生きる決意をする、ちょっとイイ話です。

■花は咲き 花はうつらふ
麻衣子と長津田の姿を見て心乱れる香夏子の姿が、学習院の妹 習子の視点で描かれます。習子は、上品で知的な学習院女子です(執事カフェ通いがお似合い!)。習子は、姉が長津田とお揃いで買った指輪を捨ててしまうのですが、そんな指輪を、 香夏子のために探し出そうと頑張る、吉沢の姿が泣かせます。

■希望の明星仰ぎて此処に
吉沢の元カノで、慶応大学出身の慶野亜衣子の視点で描かれます。亜衣子は、 香夏子の指導係で、吉沢をイケてる男にした立役者。 香夏子は、ライバル心剥き出しでしたが、徐々に心を開いていきます。

長津田はというと、麻衣子にフラれ、 香夏子に未練たらたら。何だこれ・・・

■ひとり身のキャンパス 涙のチャペル
香夏子とメキシコ行きの旅で出会った、青学 青島みなみの視点で描かれます。誠実な篤志と、イケてるバイト先の社員小井出を、二股かけているみなみ。 香夏子とみなみの間は、旅の途中の些細ないざこざからエスカレートし、テキーラ一気飲みのバトルが勃発します。

長津田とも吉沢とも付き合わないことを決意する香夏子。二股かけ続けることを決意するみなみ。そんな、潔い自分らしさが、二人を和解に導きます。

■仰ぐは同じき 理想の光
そして、六年後。香夏子以外の登場人物たちは、結婚をしています。ふと、長津田に連絡してしまった香夏子は、今の彼に失望するも、またずるずると関係を持ってしまうのでした。そんな香夏子を見かねた三千代は、合コンを仕掛けるのですが・・・

本作品集は、自分探しの物語でしょうか。主人公の香夏子のみがひたすら迷走しているように読めます(長津田もか)。 憎めないキャラクターではありますが、じれったさを感じること度々。こうして、あらすじを眺めてみると、作品としては面白いものの、つまらない大学生活だったのだなぁと、思わざるを得ませんね(人の事言えないのだけど)。

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