【本の感想】柚木麻子『本屋さんのダイアナ』

柚木麻子『本屋さんのダイアナ』

柚木麻子『本屋さんのダイアナ』は、読書好きの女子二人の成長小説です。

一人は、大穴と書いてダイアナと読む金髪美女子(なんと日本人)。もう一人は、清楚なお嬢様美少女 彩子。本作品は、彼女たちの、小学生から大人に近づくまでの歳月が、心情細やかにつづられています。

お互いを認め合った親友、いやソウルメイトと言っても良い二人が、些細なすれ違いから仲違いをし、それから10年の月日が流れてしまいます。その間の、ダイアナ、彩子のそれぞれの日常が、視点を切替えながら交互に語られます。一言たりとも会話をせず、互いの存在すらなかったかのように振舞うダイアナと彩子。二人それぞれの過ごした日々だけでも一つの小説になるのですが、所々、二人がどこかで通じ合っている事を覗わせつつ、二つの物語が一つになるまでを盛り上げてくれます。

うちの子供らを見ていると、男子より女子の方が、一旦、拗れた仲を修復するのは難しいようです。小さな頃は、兄弟よりも仲が良かった親友同士が、ちょっとしたすれ違いで長い期間の冷戦を続けてしまう。実際、そういう長女の姿を見ていると、親の自分の方が、やきもきします。

本作品は、ダイアナのキャバ嬢の母さんら脇役が良く、友情や親子愛が随所に散りばめられていて、読み進めるうちにぐぐっと熱いものが込み上げてくるでしょう。書店員として仕事に情熱を傾けるダイアナ、迷いの中にいる大学生となった彩子、ダイアナの母と消息不明の父の過去。いくつものドラマが重なり合って、ストーリーが厚みを増していきます。

本作品のラストでは、大人になった二人のソウルメイトっぷりに、さらに、さらに胸熱となります。自身の存在って何だろう?という、読者に対する問いかけでもあるのですね。

彩子および彩子の周辺の出来事は、ショッキングです。だからこそ、 より一層の成長を感じさせてくれるでしょう。(なるほど、ダイアナの命名の意図って、そういうことだったんだ!)

本作品には、本の話題が豊富です。少女らが交わす本のお話しなどに、著者の溢れんばかりの読書愛を垣間見ることができます。

さて、この4月にうちの長女は高校生になりました。男兄弟が多いので、あっさりさっぱりの性格ですが、どうも女子的な友達付き合いは得意じゃない模様。楽しい学校生活を送ってもらいたいものです。

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