【本の感想】ドナルド・A・スタンウッド『エヴァ・ライカ―の記憶』

本の感想 ドナルド・A・スタンウッド『エヴァ・ライカ―の記憶』

1979年 週刊文春ミステリーベスト10 第4位。

ドナルド・A・スタンウッド(Donald A Stanwood)『エヴァ・ライカ―の記憶』(The Memory Of Eva Ryker)は、タイタニック号の事件を題材にした作品です。初翻訳から30年たって再販されました(どうせなら、映画「タイタニック」のヒットに便乗すればよかったのに)。現在は、残念なことに、再び絶版です。

1912年タイタニック遭難時の出来事、1941年ハワイでの殺人事件、1962年タイタニック引き揚げに関わる人々に起きる謎と、時を経て物語は展開します。錯綜しがちな展開ですが、組み立てがよいのでしょう、ススっと頭に入ってきます。往年の本格ミステリさながらに「第二部解明」ですべてが明らかなったときは、どんでん返しもあってか、かなり衝撃的でした。

クライマックスのタイタニック遭難場面は、映画「タイタニック」さながらに臨場感があります。 本作品は、ヒロイン(?) エヴァの追憶から始まるので、彼女が救出されることはわかっているのですが、ハラハラドキドキウルウルがとまりません。

登場人物の設定がよくできていて、特に悪役は憎悪に近い感情を喚起させるほど。ラストの追跡劇はページめくりが加速するアクション満載です。

本作品のジャンルは、冒険謎解きアクション歴史ミステリ(!)でしょうか。解説によると作者は、この作品だけがヒットした一発屋のようですが、これだけいろいろな要素てんこ盛りの力作は、そうそう創りだせないだろうなぁと思います。

主人公ノーマンが元警官とはいえ、怪盗さながらに厳重警備の屋敷に忍びこんだり、銃火をくぐりぬけながらの追跡をやってのけるタフさには、ちと違和感ありなんですがね。