【本の感想】ドナルド・A・スタンウッド『エヴァ・ライカーの記憶』

ドナルド・A・スタンウッド『エヴァ・ライカ―の記憶』

1979年 週刊文春ミステリーベスト10 第4位。

ドナルド・A・スタンウッド(Donald A Stanwood)『エヴァ・ライカーの記憶』(The Memory Of Eva Ryker)(1978年)は、タイタニック号の遭難事件を題材にした作品です。初翻訳から30年たって再販されました(どうせなら、映画「タイタニック」のヒットに便乗すれば良かったのに)。現在は、残念なことに再び絶版です。やれやれ・・・

本作品は、1912年タイタニック遭難時の出来事、1941年ハワイでの殺人事件、1962年タイタニック引き揚げに関わる人々に起きる謎と、時を隔てて物語が進みます。錯綜しがちな展開ですが、組み立てが良いのでしょう、混乱することなくススっと頭に入ってきます。往年の本格ミステリさながらに「第二部 解明」で全てが明らかなった時は、どんでん返しもあってか、かなり衝撃的でした。

クライマックスのタイタニック遭難場面は、映画「タイタニック」さながらに臨場感があります。 本作品は、ヒロイン(?) エヴァの追憶から始まるので、彼女が救出されることは分かっているのですが、ハラハラドキドキウルウルが止まりません。

キャラクターの設定が巧くいっており、特に悪役は憎悪に近い感情を喚起させるほど。ラストの追跡劇は、ページのめくりが加速するくらいにアクションが満載です。

本作品をジャンル分けするなら、冒険謎解きアクション歴史ミステリ(!)でしょうか。解説によると、著者は、この作品だけがヒットした一発屋のようです。これだけ様々な要素がてんこ盛りの力作は、そうそう創り出せないだろうなぁと思います。

主人公ノーマンが元警官とはいえ、怪盗さながらに厳重警備の屋敷に忍びこんだり、銃火をくぐり抜けながら追跡をやってのけるタフさには、ちょっと違和感がありますか。

言わずもがなの、1997年公開 レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット出演 映画『タイタニック』はこちら。改めて鑑賞すると感慨も一入です。あぁ、(色んな意味で)若いって素晴らしい。

1997年公開 レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット出演 映画『タイタニック』