【本の感想】柚木麻子『けむたい後輩』

柚木麻子『けむたい後輩』

自分は、学生時代、世の中を斜めに視る捻くれたヤツだったので、当然の事ながら後輩からは好かれていませんでした。陰口なんて何のその、全く気になりません。でも、一方では、慕われる先輩というものに淡い憧れを持っていて、体育会系の快活な上下関係を羨ましく思っていたものです。キャラが確立してしまうと、貫き通さなければいけないのが辛いところ。孤高を気取っているほどに、他人は気にもかけてはくれていないのですが・・・

柚木麻子『けむたい後輩』は、憧れの先輩に翻弄され続けたお嬢様女子大生の四年間、そしてその後の物語です。

一発屋の作家ではあるものの、熱烈なファンが存在する栞子。主人公 真実子は、心酔する栞子と大学で出会い、募る思いの丈を栞子に告げます。才能に恵まれていないのに、プライドだけは超お高めの栞子は、自尊心を満足するためだけに、真実子をワガママ放題に振り回していくようになります。

先輩 栞子の一瞬のきらめきを信じ、付き従う健気な真実子 。(実は)非凡な才能を持ちながら、凡人に振り回されるあたりは、真美子がエキセントリックなキャラクターではあるものの、いたたまれません。栞子の理不尽ないたぶりに、読み進めながら、真実子の親友 美里と共にふつふつと怒りがこみ上げてしまいます(美里の、栞子へのしっぺ返しは愉快痛快!)。

翻弄されればされるほど、才能が輝き始める真実子。それでも、栞子の尊大さは揺るぎません。纏わり付く真実子をウザがることで、精神的に優位に立ち続ける栞子のイタさが苦々しい・・・

本作品のラストは痛快にお願い!と思ってしまうのですが、ちょっと予想を上回る締めくくり方です。 真実子の予想通りのサクセスストーリーに快哉を叫ぶというより、ホラーなみのうすら寒さを感じてしまいました。

自分は、社会人になって、随分、人付き合いが良くなりました。良い人のように思っている(勘違いしている)方もおられる様子。ただ、本質は学生の頃と変わりがないので、お疲れ気味になることも度々です。栞子のような勘違いの負け犬人生はご免ですが、自分らしさはいつまでも持っていなきゃいけませんね。うんうん。

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