【本の感想】柚木麻子『王妃の帰還』

柚木麻子『王妃の帰還』

柚木麻子『王妃の帰還』は、お嬢様女子中学生たちの友情が描かれた青春小説です。

スクールカーストを題材にし、冴えない系の女子チームを主役に据えていますが、ありがちなイジメ問題に焦点が当たってはいないので、厭な気分を味わうことはありません。むしろ、中坊の頃、冴えないチームの一員だった自分は、読み進めながら、彼女らの頑張りに力が入り、ラストでは不覚にもウルっときてしまったのです。

私立聖鏡学園の女子中等部二年生のノリスケこと前原範子は、地味目ながら気の合う仲間たち、鈴木玲子(スーさん)、遠藤千代子(チヨジ)、リンダ・ハルストレム(リンダ)と楽しいスクールライフを過ごしています。お互いの長所・短所を理解しながらの、気の置けない仲間たちです。

そんな、ノリスケらに、波乱が巻き起こります。

スクールカーストの最上位「姫グループ」の絶対的クイーン 王妃こと滝沢が、クラスの公開裁判の末、ハブにされ、ノリスケらのチームに参加することになってしまったのです。滝沢の”王妃”然とした態度に翻弄されるノリスケらの面々。明け透けな物言いに彼女らは時に傷付き、時に憤ります。ついには、仲間割れまで発生する始末・・・

ノリスケらは、一計を案じます。それは、滝沢を再びクイーンの座に就かせること。しかし、ノリスケらのチームが分裂の危機に瀕し、クラスの中も穏やかではありません。伊集院詩子率いる「チームマリア」、黒崎沙織率いる「ゴス軍団」、そして、王妃なき後、No.2の村上恵理菜率いる「姫グループ」と個性派ぞろいの女子たちが、戦国さながらに群雄割拠しています。ノリスケらのチームから他のチームへの移籍者が出て・・・

どうする、ノリスケ!果たして、今まで悪目立ちしたくないと引っ込んでいたノリスケは、王妃を返り咲かせ、クラスをまとめることができるのでしょうか!

滝沢の憧れの先生 ホッシーこと星崎卓巳と、ノリスケの母 久美子のただならぬ関係といったアクセントを挟みながら、物語は、少女たちの心のように揺れ動きます。頑張れ!ノリスケ!いくつもの困難を乗り越えて、少女たちは本音で向き合い始めるのです。このあたりは、自分の娘とだぶってしまい、ぐっとくるものがあります。

そういえば、滝沢の下の名前が出てこない・・・と思ったら、ラストでそうきましたか!ここで涙腺崩壊です。爽やか・・・ソウルメイトっていいなぁ。

本作品は、中坊必読の書です。そして、涙せよ!

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