【本の感想】薬丸岳『友罪』

薬丸岳『友罪』

薬丸岳『友罪』は、少年の頃に猟奇殺人を犯した過去を持つ、青年の物語です。

いわゆる少年Aのその後を描いた作品で、彼が友と信じた同い年の青年との関係性が主軸です。人は自分の知人が殺人犯と知った時、どのような思いに囚われるのか。友情を、そして愛情を、それを知る以前と同様に持ち続けていくことができるのか。本作品は、著者がよく取り上げる少年犯罪や加害者の心の内をテーマとしています。

ジャーナリスト志望の益田純一は、当座の仕事としてステンレス加工場に入社します。同じ日に採用されたのが、益田と同じ27歳の鈴木秀人です。益田と鈴木は、採用が決まってから、清水、内海、山内ら同僚と寮生活を始めます。

職場でも寮内でも、そっけない態度を貫く鈴木。益田は、そんな鈴木が毎夜、激しくうなされていることに気付きます。

ある日、鈴木の態度がおもしろくない清水、内海は、益田を引き入れて鈴木が不在の部屋を物色します。そこで益田は、鈴木に隠された過去があることを知るのでした・・・

読者には、鈴木が中学生の頃、二人の小学生を殺害し、医療少年院にいた青柳健太郎であることが明らかにされます。鈴木の過去がどのように炙り出され、その結果、登場人物たちがどのような変化を見せるのかに、興味をそそられるでしょう。益田は、中学生の頃に自殺した同級生に対し、何もできなかったという後悔の念を持っています。この益田の今でも引きずっている思いが、鈴木への複雑な感情の源です。

鈴木は、AV出演の過去をネタに昔の男 達也にいびられている同僚 藤沢美代子を助け、美代子から好意を持たれるようになります。絵が上手く、物静かな鈴木へ、美代子の愛情は徐々に高まるのです。このあたりは、先々の展開を予想して、辛くなるシーンです。

鈴木をサポートする白石弥生から、鈴木の動向を探るよう依頼を受ける益田。鈴木は、医療少年院のサポートスタッフの前から姿を消していたのです。鈴木から親友として慕われるようになる益田。しかし、益田は、彼の指を切断する事故の際の、鈴木の冷静な対応から、得体の知れないものを感じていました。そして、鈴木を観察するうちに、益田は、鈴木の過去を探り当ててしまいます・・・

達也にAV出演を会社のバラされた美代子。手の平を返したように、嘲り始めた同僚らに鈴木は怒りを募らせます。これは、鈴木の美代子に対する愛情でしょうか。過去を葬り去さろうとしても、許してくれない人々への苛立ちと受け取ることができます。鈴木が、達也を撃退するシーンは、狂気ともいえるほどに激烈です。

先輩 須藤の勧めで、鈴木の事を記事にした益田。しかし鈴木のことを思い掲載の中止を申し出た益田に、須藤は、センセーショナルなものへと記事を捏造し雑誌で公表してしまいます。この益田の裏切りともとれる行為が、鈴木を窮地に追い込むのでした・・・

親友として接してくれた友を、結果的にまた、裏切ってしまった益田。周囲の冷え込んでいく空気感がひしひしと伝わります。愛した人の過去に揺れ動く美代子。自分が益田であったなら、どういう行動を取ったでしょうか。また、最愛の人が決して許されない過ちを犯しているのを知ったら、愛し続けることはできるでしょうか。本作品は、こう問題提起をしています。

益田、そして美代子は、ひとつの回答を提示しています。ラストの二人の勇気ある行動に読者は、清々しさを覚えるでしょう。消せない過去を持っていても、人は前を向いて歩いていく術はある。本作品は、こういうメッセージが込められていると思うのです。

「友罪」で、”ゆうざい”。作品の内容を端的に表した、良いタイトルだなぁ。

本作品が原作の、2018年 公開 生田斗真、瑛太 出演 映画『友罪』はこちら。

2018年 公開 生田斗真、瑛太 出演 映画『友罪』

原作をほぼ忠実に映像化しています。加害者家族の結婚にまつわるエピソードは、原作にはありません(原作の寮長 山内の話を映像化したんですね)。加害者の父親役である佐藤浩市の苦悩する演技が、”もし自分だったら”を突き付けます。白石弥生の家庭問題は、入れなくて正解でしょう。ただし、ラストの鈴木の姿は、リドルストーリーのようで、ぼやけた印象を残してしまいました。

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