【本の感想】乙一『平面いぬ。』

乙一『平面いぬ。』

乙一『平面いぬ。』は、元ネタが想像できそうな4編が収録されている短編集です。

無理やりジャンルに当てはめるとすると、ファンタジーになるでしょうか。

■石ノ目
中学教師のわたしと同僚のNは旅先の山奥で道に迷い、一軒の民家に辿り着きます。そこの女主人は、宿を提供する代わり、顔を見ないことを二人に約束させるのでした。わたしは、庭に散在する石像から、女主人は人を石に変える石ノ目ではないかと疑念を抱きます・・・

乙一の別名義である山白朝子風の怪談話です。山奥の人家に迷い込んだものが妖魔に試される類の物語として、泉鏡花「高野聖」を思い起こさせます。ラストのヒネリが、著者ならではです。(リンクをクリックいただければ感想のページに移動します

■はじめ
小学生の耕平と淳男は、学校で買っているヒヨコが死んでしまった責任を、”はじめ”という女の子に擦り付けます。”はじめ”は、耕平と淳男がでっちあげた存在でしたが、具体的な姿かたちを想像するに従い、二人の前だけに姿を現しますす。耕平と淳男は、毎日のように”はじめ”と遊ぶようになって ・・・

イマジナリーフレンドものということになるでしょうか。二人にだけ見える存在というのが面白いですね。この手のお話はせつない終わり方をすると想像がつくのですが・・・やっぱり・・・

■BLUE
王子、王女、騎士、白馬。ケリーのつくった人形が生命が宿ったかのように動き出しました。そして、彼らの余りの生地で作った不格好な人形BLUEまでも・・・

乙一版トイストーリーです。ハッピーエンドで皆仲良く、とはならないダークな結末が気に入っています。

■平面いぬ。
わたしの腕に彫った犬の刺青が動き出しました。わたしは、犬をポッキーと名付け共同生活を始めます・・・

こちらは、乙一版ど根性ガエル。ピョン吉と違ってポッキー(名前が似ていますね)は、主人公のからだを駆け巡ります。餌は、刺青として彫るという発想が面白い作品です。主人公の家族との葛藤を折り込んで、なかなか奥の深い物語に仕上がっています。

ちなみに、単行本の方は、『石ノ目』がタイトルとなっています。

乙一『石ノ目』
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