【本の感想】原田マハ『本日は、お日柄もよく』

原田マハ『本日は、お日柄もよく』

米大統領選の決着は、そろそろつきますか。トランプ?はたまたバイデン?オバマ前大統領も参戦したりと、あちらの国の出来事ではありますが、ショーとして大いに盛り上がる今日この頃です。スピーチの良し悪しが命運を左右決める正念場。スピーチライターの腕の見せ所です。

原田マハ『本日は、お日柄もよく』は、スピーチライター見習い女子の奮闘を描いた作品です。

日本の天下割れ目の選挙戦を舞台にしていることから、今が旬の読み物でしょう。時代背景として、オバマがアツイ選挙戦を戦っていた頃ですしね。

製菓会社のいちOL二ノ宮こと葉は、幼馴染 今川厚志の結婚式の最中、居眠りをするという失態をし、それがきっかけとなって久遠久美と知り合います。上から目線の久美に、ちょっと気分を害すること葉。久美は、厚志の父 民衆党議員 故今川篤朗の代表質問を書いたスピーチライターだったのです。(久遠久美は、『総理の夫』にも登場します)

出会いにちょっと悶着がありつつも、徐々に信頼関係を築くというのが、自己実現系ストーリーの王道です。久美のスピーチに魅せられたこと葉は、会社の同僚 千華の結婚式のスピーチを久美に依頼します。しかし、久美はこと葉に自身でスピーチを書くように促すのでした。

ここからは、予想通りの展開で、スピーチライターとしての喜びを見出したこと葉が、久美の指導の元(とは言えゆるゆるですが)見習いを始めます。ここで登場するのは、白鳳堂のコピーライターである厚志のライバル、番通のコピーライター和田日間足(ワダカマ)。ワダカマは、こと葉の勤める会社のブランドイメージ一新プロジェクトのリーダーで、こと葉の、結婚式でのスピーチを聞いてプロジェクトチームに引き抜いたのです。出会いは最悪、しかし・・・、こちらも王道パターンですね。

言葉は読むものではない、操るものだ

このワダカマ、良い事を言うなぁ。

久美は、野党民衆党 小山田党首の依頼を受け、選挙対策の支援をすることになります。小山田は、神奈川の選挙区から厚志を立候補させたいと考えていました。皆の説得に耳を貸さない厚志でしたが、小山田のアツイ思いを知り立候補を決意します。そして、こと葉は、厚志をサポートするため、会社を辞めて選挙に専心することを決意するのです。

厚志の対立候補は、与党進展党 現厚生労働大臣 黒川常治。黒川陣営のスピーチライターは、ワダカマです。絶対に負けられない戦いに、最悪のアクシデントが発生!厚志 V.S. 黒川、そして、こと葉 V.S. ワダカマ 勝負の行方は果たして・・・

いやいや、ここまでシンデレラストーリーが突き抜けると、ファンタジーですね。本作品中に、心を揺さぶるスピーチが見られるかというと、疑問が残ります。手に汗握るクライマックス、そして時は流れ・・・、出来過ぎという感情がむくむくと湧き上がってくることは否めません。

とは言え、ラストシーンはとても良うございました。読み終えた時、元気が出ることは間違いありません。こと葉の祖母で日本を代表する俳人二ノ宮驟雨、厚志の妻 恵里といった脇役もステキです。

三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。

ちなみに、お日柄というのが、大安、友引、仏滅・・・の総称だとつい最近知りました。

2017年 放映 比嘉愛未、長谷川京子、渡辺大 出演 ドラマ『本日は、お日柄もよく』はこちら。

2017年 放映 比嘉愛未、長谷川京子、渡辺大 出演 ドラマ『本日は、お日柄もよく』
  • その他の原田マハ 作品の感想は関連記事をご覧下さい。