【本の感想】原田マハ『ランウェイ・ビート』

原田マハ『ランウェイ・ビート』

ケータイ小説(ケータイしょうせつ)とは、携帯電話(特にフィーチャー・フォン)を使用して執筆し閲覧される小説(オンライン小説、電子書籍)である。

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ケータイ小説の何たるかを知らないうちに、ブームは去ってしまったようですね。執筆と閲覧の手段がどうであれ、要はコンテンツ。お手軽デバイスで物語をつづったとしても、読者へ与える感動は変わらないはず・・・とは頭では理解するのですが、ケータイ小説と謳われると腰を据えて読もうという気が減衰してしまいます(石川九楊書とはどういう芸術か-筆触の美学』では書と文学の関係を述べてました)。(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します

原田マハ『ランウェイ・ビート』は、ファッション大好き高校生たちが主役のケータイアオハル小説です。

転校生 溝呂木美糸(ビートって!)は小柄ながら、人目を惹かざるを得ないファッション感覚で、早々にクラスの女子を圧倒してしまいます。そんなビートに心奪われる塚本芽衣(メイ)。モデルの立花美姫(ミキティ)、その下僕で冴えない男子犬田悟(ワンダ)、秋川杏奈(アンナ)ら、それぞれが、ビートと関わるうちにファッションに目覚め、スクールカーストどこへやら、バラバラだったクラスの皆にいつの間にか一体感が生まれるという展開です。

ビートのプロデュースでワンダ イケてる男子に変身!、恋するメイにどうやらライバルが!、ミキティがあれあれワンダに恋を!と、予想を裏切らない如何にもな盛り上がりです。そして、降って湧いたように学園が廃校の危機!ビート、そして仲間たちは立ち上がります。

このサックリしたゆるふわ感が、ケイタイ小説の真骨頂でしょうか。ビートすげぇ!が実感できないからなのか、彼らの気持ちが響いてきません(15歳の天才ファッションリーダーがイメージできないのは、自分の感性が貧困?)

ビートの父でファッション業界に身を置く溝呂木羅糸(ライトって!)、その父と距離を置く祖父でビートらの良き指導者 溝呂木善服、羅糸のライバル 安良岡覧、羅糸を裏切って安良岡覧についたデザイナー パク・ジュンファ、ビートの才能に目をつけたデザイナー 南水面。これらのキャラクターがストーリーに厚みを与えてくれる・・・ はずなのですが、人間関係が錯綜しているわりに薄口です。

ビートの学園を救う作戦に、パク・ジュンファと安良岡覧の妨害が!どうするビートと仲間たち!うんうん、疾走感は十分です。

ただし、著者の作品にみられるホロ苦さは、とって付けたようで、これまたふわっとしてしまいました。メイの視点で物語が進むのかと思いきや、途中で曖昧になるので、のめり込めないのです。なるほど、ケイタイ小説ねぇ・・・ 原田マハ作品制覇を目指すものとしては、避けては通れない道でございます。

本作品は、高校生の娘の好みに合うように思います。とりあえず、娘との会話が増えそうで良かった。 かな?

本作品が原作の、2011年公開 瀬戸康史主演 映画『ランウェイ☆ビート』はこちら。

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