【本の感想】キース・ピータースン『夏の稲妻』

キース・ピータースン『夏の稲妻』

1990年 エドガー賞 ペーパーバック部門受賞作。

キース・ピータースン(Keith Peterson)『夏の稲妻』(The Rain)(1988年)は、新聞記者ウェルズ シリーズの第三弾です。

シリーズを重ねる毎に、タフなシーンがパワーアップしてきました。若き美人記者ランシングのチャーミング度合いも右肩上がりです。

ウェルズへ持ち込まれた情報屋メイフォースからのタレコミは、下院議員ポール・アビントンの性的スキャンダル。ウェルズは、これを一顧だにせず突き返します。程なくして、メイフォースの射殺死体発見の報がもたらされます。メイフォースは、アビントンを強請っていたようなのです。事が公になるにつれ、特ダネを蹴ったウェルズの振舞いが、上司ケンブリッジ含め社の上層部の知るところとなります。怒りを露わにするケンブリッジ。最悪の立場に立たされたウェルズは、上層部の審判を仰ぐはめに陥り・・・

本シリーズの見所は、ウェルズとランシングの仲、そして、ウェルズ V.S. ケンブリッジです。どうしてもウェルズに煮え湯を飲ませたいケンブリッジは、ウェルズを窮地に落とすべくあの手この手で嫌がらせを行います。

上層部からウェルズに突き付けられたのは、アビントンのお相手ジョージア・スチュアートの写真を探し出し、真相を記事にすること。タイムリミットは5日間。それを過ぎれば、ウェルズは解雇を余儀なくされます。折しも、ウェルズは、ジョージアの(自称)婚約者 牧師見習いのウォリー・シェイクスピアと知己になったばかり。ウェルズは、ウォリーから拝借したジョージアの写真を携え、事件を追います・・・

記者としての矜持と上層部からのプレッシャーのせめぎ合いで、読んでいるこちらの方が、イライラを募らせてまいます。ブレない、媚ない、一本筋の通ったウェルズの記者魂で、上層部をぎゃふんと言わせることができるでしょうか。傍で見守るランシングと共に、気が気ではありません。

スキャンダルをきっぱりと否定するアビントン。やっとのことでジョージアに辿り着いたウェルズでしたが、目の前で何者かに車で拉致されてしまいます。ここは中盤の盛り上がり所で、カーチェイスあり肉弾戦ありと、ページを繰る手が止まりません。その手のヒーローではないので、結局は、痛い目に合ってしまうのですが。

アビントンとジョージアに何があったのか。メイフォースの死の真相とは。ウォリーは、ジョージアと再会できるのか。そして、ウェルズは、特ダネで汚名挽回となるのか。降って湧いたランシングの結婚話に、ウェルズと共に同様を隠せないまま、ラストへとなだれ込みます。最後の最後まで、二転三転する成り行きに意外な真相が浮かび上がるのです。

ウェルズ V.S. ケンブリッジの決着がつき、ランシングとの仲もようやく近づいてきました。新たな展開を期待しつつ、最終巻『裁きの街』へと続きます。

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