【本の感想】舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』

舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』 上巻

2008年 SFが読みたい! 国内編 第8位。
2009年 このミステリーがすごい! 国内編 第9位。

舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』は、まい子専門の探偵ディスコ・ウェンズデイが主役の、奇妙奇天烈な物語です。文庫上中下巻と、分量からして読む前に覚悟が必要な作品。そして読み進めながらも、途中で挫折しそうな気持を奮い立たせねばならぬ、読書アスリート的根性が必要な作品です。

かくいう自分も、鼻歌をふんふんと奏でたくなるようなタイトルにぐぐっときていましたが、あまりの物量に読み始めるのを長らく躊躇っていたのです。結論から言ってしまうと、本作品は、マイジョー初心者にはハードルが高過ぎるでしょう。

不条理小説?。いやいや、奇書と言っても良いのではないかと思います。

ディスコと暮らす6歳の少女梢。ある日、梢の体に17歳の梢が侵入し、大きくなってしまいます。元カノ 勺子のサポートを得て、梢の謎を探るディスコ。畳み掛けるような饒舌文体で物語は始まります。

舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』 中巻

魂となってしまった6歳の梢。ディスコは梢の魂の行方を追ううちに、ミステリー作家の不可思議な殺人事件に巻き込まれてしまいます。

相棒(?)水星Cを従え(?)、事件現場となった館で名探偵たちと推理合戦を繰り広げるディスコ(名探偵 大爆笑カレーって!)。推理に失敗して次々に自死していく探偵たちの姿に、読み進めながら混乱の極みに達してしまいました。梢の体内に残された指、魂を盗むパンダラバー、悪の象徴 黒い鳥の男等々、謎解きを放棄したかのように物語は、広がり続けます。

『煙か土か喰い物』『世界は密室でできている』 のルンババ、『九十九十九』の九十九十九まで登場させ、さぁ、どう風呂敷を畳むのでしょうか。え!どうすんの!(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します

舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』 下巻

斃れた名探偵たちの最後の砦が、そう、ディスコ・ウェンズディ。真打登場で、不可思議な殺人事件を解決(?)してみせます・・・が、これが終わりかと思いきや、ここから空前絶後の展開をみせるのです。

3億人の児童誘拐という更なる大風呂敷!推理の過程でディスコが会得した能力は、時空を超えてより物語を複雑化させてしまいます。ジョジョの奇妙な冒険にさも似たり。推理力のパワーインフレ状態です。このあたりで、多くの読者が脱落するように思いますが、もう乗り切るしかありません。考えるのではなく、感じるのだ!の精神です。

大団円を迎えた後は、達成感たっぷりですが、理解できたかは疑問。再読はできないでしょう。ただ、ただ、マイジョー スゲー!

何をどうすればいいのか判らないことを判らないままとにかく始めることを《何とかする》って言うんだよ。憶えとけ。

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