【本の感想】舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる。』

舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる。』

『好き好き大好き超愛してる。』

芥川賞候補でありながら、審査委員の御大に毛嫌いされた舞城王太郎の作品タイトルです。選考の際の、この元東京都知事の言は、話題になりました。確かに、昭和なJ-POPでも使わないようなフレーズであるがゆえに、自分も舞城王太郎作品でなければ手に取ることはなかったでしょう。加えて、モーニング娘。的な読点が気になりましてね。

ところがどうでしょう。読み終えてみれば、あら不思議。このタイトルは、口ずさんでみたくなるほど、ぴったり、しっくりくるのです。もちろん、実際に「好き好き大好き超愛している」マルを発すると、アブねーじいさんになってしまうので脳内で堪能するだけですけど。

本作品は、「愛は祈りだ。」で始まる饒舌な物語です。死を目前にした恋人とのひととき、そしてその後を描いていますが、苦しみや悲しみを超越してくれるのです。

死後に送られてくる恋人からの手紙なんていう、洋画を思い起こさせるホロ苦さを折り込みつつ、夢の直し方を教えてくれるおじさん(ミスターシスター)が登場するファンタジーや、主人公 治が描く作中作の スペース・オペラ 「ラリアット・ポイント11助けて用務員のサ駅さん!」をぶっ込んできます。

愛を高らかに謳いあげながら、全くクサくはない。支離滅裂なようで、一本筋が通っている。この世にいない女の子への溢れんばかりの思いの丈。著者の饒舌文体が、愛の祈りに拍車をかけます。

パスカルは言った。愛し過ぎていないなら、充分に愛していないのだ。

相変わらず、一筋縄ではいかないのが舞城王太郎作品。著者の祈りを理解したのか、やや心許なくはあります。ただ、これだけは言えます。こりゃまた、びっくり仰天のラブ・ストーリーでした。

さて、洋画のようなと書きましたが、2007年公開 ヒラリー・スワンク 出演 映画『P.S. アイラブユー』は、亡き夫から突然、手紙が届き始めるというラブストーリーです。 悲しみにくれる主人公ホリーが、その手紙に導かれて...。この映画のジェラルド・バトラー演じる旦那はサイコーです!

2007年公開 ヒラリー・スワンク 出演 映画『P.S. アイラブユー』
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