【本の感想】クライヴ・バーカー『イマジカ』

クライヴ・バーカー『イマジカ』( 原著)

クライヴ・バーカー(Clive Barker)『イマジカ』(Imajica)(1991年)は、異世界ダーク・ファンタジーです。

翻訳文庫全四巻からなる、この長い長い物語は、何層にも重ねられた謎また謎に包まれており、興奮の第一巻でがっちりハートを掴まれてしまいます。何せ、たいした説明もないまま、この世界と隣り合う4つの異世界に誘われるのですから。

女ったらしの贋作画家ジェントルは、彼の昔の恋人ジュディスが、殺し屋パイオパに狙われていることを知ります。ジュディスを守るためジェントルはパイオパに対峙しますが、パイパオは異世界から来た両性具有の種族でした。

幕開けはサイコー。

見る人によって姿態を変えるパイオパという異世界人に魅了されます。物語はジェントルを中心にした異世界への旅から、崩壊の道を辿ろうとするこの世界へと、様々な人、種族を巻き込んで大きな風呂敷が広げられていきます。

ところがどっこい、二巻から様相が怪しくなってしまうのです。自分探しの旅へ出かけたジェントル。なんと彼は・・・、そしてジュディスは・・・

話をてんこ盛りにしたせいか、枝葉に別れた話の数々が途中でぶった切られてしまいます。紙面の都合?話が続かなくなった?重要と思われたキャラクターが、いとも簡単に命を落としたり、横道に逸れていた物語の軌道が、いつの間にか修正されたりします。何と、海外ドラマにありがちなパターンではないですか!

第三巻、第四巻に向けては、どうにも迷走を続けているようにしか思えなくなります。全ての異世界を統べる神。異世界とこの世界の融合を図ろうとする意志。立ち向かうは ・・・ いやいや、アウトラインだけ紹介すると途轍もないスケールを想像するでしょうけれど、残念ながら意外と小さくまとまっているのです。

キャラクター(特に悪役)や事物は、バ―カ―のイマジネーションを堪能できるので、ここは楽しいですね。ただ、この大作を読むのにかけた時間に見合う収穫があるか、というと疑問です。第四巻の最終ページで得られたのは、やっと読みきったという達成感です。

だいたい、異世界の接点がイギリスにあり、異世界の住人達も英語圏の人々と、ほぼ意思疎通できるっていうのが、納得できんのだよなぁ。

(注) 読了したのは扶桑社文庫の翻訳本『イマジカ』で、書影は原著です。

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