【本の感想】辻村深月『家族シアター』

家族というのは、時として厄介なものです。自分は、息子であり、兄でもあり、父親でもあり、と色々な役割を担ってるわけですが、様々なライフイベントを通してみても、いつも家族円満とばかりは言えませんでした。面白くない事があれば、会社関係なら仕事を離れてしまえば仕舞いだし、知人なら疎遠になれば済みます。ところが、家族はそうはいきません。ぎくしゃくしながらも、簡単には家族を辞められないのですから。もっとも自分の場合は、この捻くれた性格が、家族を悩ましていたのかもしれませんが・・・

辻村深月『家族シアター』は、家族をテーマとした7作品が収められた短編集です。

自分は年齢のせいか、父親やじいさんのお話にはホロリときてしまいます。やっぱり、家族は色々あっても、やっぱり家族なのだと、再認識した次第です。良かったのは『私のディアマンテ』『タイムカプセルの八年』『孫と誕生日』。以下に紹介しましょう。

■私のディアマンテ
豊島絢子の高校二年生の娘えみりは、東大、京大を狙えるほどの成績優秀者。研究者一家の父兄にバカにされて育った絢子は、えみりとしっくりいっていません。日記を盗み見た事が、決定的になってしまったのです。ある日、絢子は、えみりが妊娠していることに気付きます。その相手は、何と担任の田中先生だったのです。

優秀過ぎる娘と愚鈍に近い母の関係性が、どう変化していくかが見所です。頭の良い子なりに悩みというものはあるものですね。ちょっと抜けた感じの絢子の、愛情溢れる芯の強さに感銘を受けました。タイトルの『ディアマンテ』は、兄嫁の桃子が娘と掲載されたと、厭味ったらしく絢子に自慢していた雑誌名です。ラストは、絢子とえみりの雑誌掲載のためのツーショットシーン。そして、えみりが絢子に『ディアマンテ』の意味を教えます。

■タイムカプセルの八年
日本語学の学者 水内孝臣はちょっと世間常識からズレた父親。息子の幸臣とは、仲の良い親子とは言い難い関係です。そんな孝臣が渋々参加した六年生の”お父さん会”(通称”親父会”)で、洋菓子屋の沢渡に引きずられならも、会計を勤め上げます。卒業のイベントは、担任の熱血教師 比留間の企画タイムカプセルです。

月日は流れ、幸臣が高校三年の頃、タイムカプセルが埋められないまま体育館に放置されていることが判明します。孝臣は、比留間に憧れ教師を目指している幸臣の気持ちを考え、何とかしようと学校から真相を聞き出そうとするのですが・・・

人付き合い悪い唐変木親父が、息子のために一肌脱いじゃう作品です。”親父会”のメンバー再集結で、考え出した手立てとは。愛情表現が下手くそな父親の姿に共感を覚えてしまいました。自分もうっかり、ぽっかりをよくやらかして皆を呆れさせたものです。孝臣と同様、私生活はゆるゆるなんだよなぁ・・・

■孫と誕生日
七十となった俺の元へ、アメリカから長男孝治一家が越してきます。小学校三年の実音は、俺との考えの違いから距離ができてしまいました。ある日、俺は、実音が、落ち込んでいる様子を見かけます。どうやら、友達の誕生会に呼ばれなかったようなのです。俺の励ましは、実音には通じません。

俺は、実音ら三年生の特別講師として竹とんぼ作りを教え、子供らに師匠と慕われるようになります。それでも、実音は、俺に近づこうとはしません。程なくして、友達の誕生日に呼ばれた実音。しかし、そこでもまた実音は、友達から軽んじられた扱いを受けるのでした・・・

距離を置いて孫を見守る祖父の姿に、ホロリくる作品。孫に、竹とんぼを通して元気を与えるシーンが良いのです。あぁ、これに感動するようになるとは、自分もじいさんになったという証拠・・・

その他の作品は、『「妹」という祝福』『サイリウム』『1992年の秋空』『タマシイム・マシンの永遠』(タイム・マシンには非ず)です、

自分はあとじいちゃんの役割を残すばかり。これだけは、無邪気に楽しみなんだよなぁ・・・。責任ないし。

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