【本の感想】辻村深月『島はぼくらと』

本の感想 辻村深月『島はぼくらと』

辻村深月『島はぼくらと』は、瀬戸内海の離島に暮らす、男女四人の高校生が主役の青春物語です。

のびやかな朱里、とっつきにくい衣花 、とんがり気味の源樹 、ちよいおとなしめの新。どこにでもいそうな彼らのキャラクターは、男女四人組のあるある設定でしょうか。読み始めは、恋の駆け引きだの、鞘当てだのを読まされてはたまらんなぁ・・・と思いました。

しかしながら、そんなお手軽な恋愛小説ではないのです。 では、風光明媚な島で展開される美しい友情だけのお話し?これもさにあらずです。

本作品は、島のそもそもの住民とIターンで移住した住民との微妙な関係や、古くからの住民間にくすぶり続ける根深い軋轢、四人がそれぞれ抱えるお悩み等、きっちりと現実が描かれています。四人の心根が真っ直ぐであるがゆえに、突然の悪意に不安を掻き立てられてしまいます。キレイ事だけに終わらず、ちょっとした波乱を起こしてくれるのが良いですね。

四人は、生い立ちや、今置かれている環境など、相容れないところもありながら、ゆるやかな信頼関係を築いています。大人未満の彼らの、押しつけがましくない友情がリアルです。

本作品は、びっくり仰天な展開はありません。ですが、ミステリっぽくちょっとした謎をばらまく等、読ませ方が上手いんですね。退屈することなく読み進められるでしょう。

クライマックスの修学旅行のシーンは、颯爽と駆け抜けていくような快活さを感じさせます。この手の作品は、”そして数年後・・・”がお約束事ですが、本作品も例にもれずです。そして、読み終えた時、まんまと(?)清々しさを感じてしまうのでした。

ん?

登場人物の地域コーディネータの谷川ヨシノ、 脚本家の赤羽環は、他の作品にも登場するとな!メモメモ・・・。伊坂幸太郎作品もそうだけれど、せっかくの辻村深月ワールドなのに、登場人物を憶えていないのが難です。

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