【本の感想】辻村深月『盲目的な恋と友情』

辻村深月『盲目的な恋と友情』

辻村深月『盲目的な恋と友情』は、女子二人に起きた死にまつわる出来事をそれぞれの視点で描いた作品です。

「恋」「友情」というタイトルで章が分かれており、一見して麗しい物語を想像するのですが、さにあらず。それぞれが、恋愛と友情へ一直線過ぎるがゆえにかえって居たたまれない気持ちにさせられる作品です。

「恋」では、学生オーケストラのバイオリニスト 一瀬蘭花の視点で物語は進みます。

元タカラジェンヌの母を持ち、自身も美貌に恵まれた蘭花。蘭花は、6年前に死亡した指揮者 茂美星近との5年間の恋人時代に思いを馳せます。眉目秀麗なイケてる二人というのは、著者の作品でちょいちょいお目にかかる設定ですね。なので、幸せは長くは続かないというのが既定路線。本作品の蘭花は、茂美に恋焦がれて身も心も捧げてしまうのですが、一方の茂美は、女性関係にとてもルーズ。茂美が私事する指揮者 室井の妻 菜々子との怪しい関係に、やきもきさせられっぱなしです。菜々子は、茂美を操っているのではないか・・・

二人の関係は、菜々子のことが室井にバレてから様相が一変してしまいます。茂美は、室井から切られて転落の人生をまっしぐら。商社に就職し社会人として歩美始めた蘭花へ執拗に付きまとうようになるのです。ここは、『凍りのくじら』で主人公 理帆子のストーカーと化す若尾にさも似たり。著者は、腹の立つくらいしょうもない男を描くのがお上手です。(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します

別れを拒み、そして、死体となって発見された茂美。彼は、自殺だったのか・・・。一年の休養を経て、蘭花は同僚 乙田との華燭の宴を迎えます。

「友情」は、「恋」にも登場する蘭花の友人 傘沼留利絵の視点で、「恋」を違った側面から描いていきます。

男に媚びる女が嫌いな留利絵。蘭花の取り巻きたちも留利絵は、気に入りません。時に感情を激しながらも、蘭花との友情を育んでいきます。「恋」では、蘭花が恋愛関係に優先順位を置いていたため、留利絵は良き相談相手であるものの、なくてはならない存在に見えませんでした。ところが、「友情」では、留利絵は、蘭花の絶対的な親友なのです。

聞くところによると、女性は友達を取った、取らないでもめるそうですね。「友情」を読むと、その心の揺れ動く様が良く分かります。若い女性読者が共感する所以でしょうか。綺麗な女性と付き合った冴えない男が、過去の恋人の事を吹聴するという件も、冷ややかな女性目線で上手く表現されています。

さて、蘭花の結婚式で、揺るぎない友人の地位を確立し、誇らしげな留利絵。留利絵のスピーチが始まります。そして、幸せの絶頂にいる蘭花と留利絵の前に現れたのは・・・。

自分は、一つの話を別な角度で見る作品は、飽きを感じてしまう傾向にあります。そこは、大どんでん返しで溜飲を下げてくれれば申し分ないのですが、本作品は、想定の範囲内で落胆してしまいました。

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