【本の感想】辻村深月『ロードムービー』

辻村深月『ロードムービー』

辻村深月『ロードムービー』は、多感な少年少女らの、やるせない気持ちにグッとくる5作品からなる短編集です。

読む順番を間違えているらしく、本短編集の登場人物たちがどの作品と関連するのか、よく分かっていません。カンニングすると、デビュー作にして、第31回メフィスト賞受賞作『冷たい校舎の時は止まる』の登場人物が出演するのだとか。単独作品として愉しめるのですが、関連作品を追っていくと、さらにグっとくるでしょう(辻村ワールド ファンの皆様、スミマセン)。

おっ!となる起死回生の物語「ロードムービー」と、友情がか形づくられる時を描いた「トーキョー語り」がお気に入りです。

■街灯
鷹野が、ある女性へ影ながら送る温かな視線が印象的な、4ページほどの掌編です。鷹野(博嗣)は『冷たい校舎の時は止まる』の登場人物だそうで、じゃあ女性は?は、デビュー作を読むべしですね。

■ロードムービー
人気者トシは、万引きをしてると噂の弱虫ワタルと友達になったことで、それを気に入らない新田アカリを中心に、クラスから爪弾きされるようになりました。徐々にいじめの標的になっていくトシとワタル。トシは、クラスの委員長に立候補するもアカリに手酷く敗退してしまいます。そして、トシは、児童会長になろうと、決意するのですが・・・

六年生を目前にし、家出をしたトシとワタル。ワタルの家の借金を誘拐の身代金として賄おうというトシの計画です。いじめから児童会長選挙へと過去、現在が行き来しつつ物語が進みます。小学生の幼い友情が瑞々しさを放つ作品で、ラストは快哉を叫びたくなるでしょう。ちょっとしたサプライズが仕掛けられています(再読すると著者の巧妙な手口?が分かります)。読者は、その後のトシとワタルには再開できるのかな。

トシが家出の途中で立ち寄った弁護士タカノは、「街灯」の鷹野ですね。で、奥様は?

■道の先
塾講師をバイトで勤める大学生の”俺”。”俺”は、塾に通う中学三年 大宮千晶から好意を持たれています。大宮千晶は、バイト学生を何人も辞めさせている、優秀かつ辛辣な少女でした・・・

オトナ一歩手前の少女とオトナになり切れていない青年の、恋人未満の初々しいラブストーリー(かな)。自身も悩みの中にいたことのある”俺”が、多感な少女に寄り添う姿が良いのです。”俺”と”俺”のカノジョと思しき女性の名前は明かされませんが、ヒントは二人の会話の”サカキくん”でしょうね。

■トーキョー語り
さくらの高校へ東京から転入してきた久住薫子。地方の高校へ都会の転校生が来たことでクラスは華やいだ雰囲気なります。しかし、さくらは、中学生の頃、転校してきた遠山さんが、徐々に反感を買い輝きを失っていく様を思い出して、薫子のこれからのことを心配してしまうのでした。ほどなくして、学級委員の一美が薫子の家庭の事情を知り攻撃を開始します。

一美の扇動で、薫子と距離を取り始めるクラスメートの女子たち。薫子が東京から来たという嘘を告白した時、怒りはピークに達します。そんな時、薫子のために声を上げたのは薫子でした・・・

仲違いや和解で友情を深めていくありがちなストーリーですが、ほらやっぱりねの快感はアリでしょう。一美 V.S. 遠山の対決、そしてその顛末には、ホロリときます。友情よ、永遠なれ~。

■雪の降る道
雪の降る気配を感じ、足立絹子は庭を見渡すと一人の少女が佇んでいます。みーちゃんと自分を呼ぶ少女は、病気のヒロくんに絹子から貰った飴を上げると言います。みーちゃんは、ヒロくんに、自分の持ち物を見せて慰めようとしているのです。しかし、ヒロくんは、そんなみーちゃんが鬱陶しくて・・・

子供の我がままで優しくて傷つきやすい姿が、活き活きと描かれた作品です。行方不明になったみーちゃんをヒロくんの代わりに探しに行くスガ兄って?

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