【本の感想】辻村深月『オーダーメイド殺人クラブ』

本の感想 辻村深月『オーダーメイド殺人クラブ』

辻村深月『オーダーメイド殺人クラブ』は、いわゆる少年Aものです。本作品が特徴的なのは、望んで被害者たろうとするものが、少年Aを作りあげていくというプロットです。

中学二年生の女子小林アンは、バスケ部に所属し、クラスの中では、友人の斉藤芹香とともに、いわゆるイケているグループにカテゴライズされています。

アンは、家庭ではママに愛情をいっぱいに注がれているのですが、ある日、ママに自身の秘密の暗い側面を覗き見されてしまった事から自殺願望が芽生えてしまいます。そして、アンは、鼠を嬲り殺していたクラスメートの昆虫系男子 徳川勝利に自分を殺してくれるように頼むのです。

イケているアンとショーグン.Jrと揶揄されるイケてない徳川。 「悲劇の記憶」と題したノートに二人の奇妙な共謀関係がつづられます。学校では相いれない二人が、それぞれの悩みを抱え、反発を繰り返しながら加害者と被害者のあるべき姿を求めて作戦を練るのです。

本作品は、アンがオーダーした殺人の依頼が本筋です。しかしながら、それだけに終わっていません。学校や家庭で直面している様々な問題という枝葉を広げ、この年頃のゆれる感情を多方面から活写していきます。

理想を押しつけ気味のアンのママ、毛嫌いしているにも関わらずアンを目にかける副担任 佐方、アンの友人でありながらイケてないことから学校では距離を置いている美術部の花崎江都子(えっちゃん) 。些細な行き違いでアンをハブする芹香と倖。 一方で、泰然としているかに見える徳川も、苦悩に苛まれています。 厭な思いに押しつぶされそうになって、アンの「悲劇の記憶」は具体性を帯びてきます(秋葉原のスタジオでのアンと徳川の予行演習がイタい!)。

10代前半の狭く、残酷な世界の中で、きりきり舞いしている多感な頃を思い出してしまいました。

はたして、アンと徳川の目的は達成するのでしょうか?・・・っていうお話ではないんですよね。タイトルで損してように思います。成長小説として読むべきなんでしょうね。ミステリぢゃないよ。

及川由美 画 『オーダーメイド殺人クラブ』

本作品が原作の、及川由美 画 『オーダーメイド殺人クラブ』はこちら。

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