【本の感想】伊藤たかみ『ミカ!』

伊藤たかみ『ミカ!』

2000年 第49回 小学館児童出版文化賞受賞作。

ミカとユウスケは双子の小学六年生。男まさりのミカは女の子になりたくありません。気に入らないことがあれば、同級生の男子にさえケンカをふっかける始末。ユウスケもオトコオンナのミカに翻弄される毎日です。

でも、ユウスケは、そんなミカに手を焼きながら放っておくことができません。あれやこれやと心を砕くのです。ユウスケにとって、ミカは家族であるとともに大切な友達なのでしょう。

自分の一つ違いの妹も我が強くて、子供の頃は随分ひどい目にあいました。それでも、妹は、友達の少ない自分とっていちばん仲の良い友達でした。少女になっていくまではね。

伊藤たかみ『ミカ!』は、そんな懐かしい日々を思い出させてくれます。

ユウスケとミカの父さんと母さんは別居中です。父さんには新しい彼女がいます。高校生の姉さんは、父さんと折り合いが悪く、ミカとも喧嘩ばかり。

ユウスケとミカは家族がばらばらになっていくことを予感しています。オトオコンナのミカは誰にも涙を見せたくありません。ユウスケは、そんなミカの気持ちを理解しているのです。

ある日、ミカとユウスケは、不思議なサツマイモのような生き物を見つけます。ミカがオトトイと名づけた生き物は、悲しい涙に触れると大きくなっていくようです。ユウスケは大きくなっていくオトトイを見て、ミカがこっそり泣いているのを知ります。

ミカのこらえきれない涙を表現した素敵なシーンです。ミカの涙とそれを見守るユウスケの優しさに、自分はウルウルしてしまいました。

ユウスケは、ミカが少女になっていくのに戸惑いを隠せません。小さい頃のようにくすぐり合いをしても、ミカにほんのり女性を感じてしまうのです。おまけに、親友のコウジがミカに告白したいと言い出します。

思春期の入口に立った子供たち。

彼らの微妙な気持ちがとてもキュートに描かれています。伊藤たかみ作品には、心が暖かになる癒しがあるようです。

『ミカ!』は、ちょっと疲れたときに、元気を取り戻すにはピッタリの作品です。『ミカ×ミカ!』で中学生になったユウスケとミカにあえます。

さて、今やすっかりおばちゃんになった自分の妹だが、気の強さは相変わらずです。でも、旦那のメタボや、息子の進路を心配する姿を見ると、お互い年をとったなぁと嘆息してしまいます。

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