大人が読んでも十分に楽しめる青春小説です。むしろ、疲れ気味の社会人への一服の清涼剤となると思います。音楽系ドラマの王道として、ありがちというか、教科書的ではあるのですが、このあるある設定が心地よいです…
【本の感想】伊藤たかみ『ミカ×ミカ!』
自分の小中学校時代は、実に冴えませんでした。スポーツがダメで、おしゃべりが苦手、そして(永遠の)のび太顔。それでも、中学三年の頃、初めてカノジョができました。
比較的女子にモテる息子たちに、こういう話をすると「嘘つけー」と言われてしまいます。疑いの眼差しに耐えられず、実家の倉庫に眠っているアルバムを見せたろかと思いますが、「ホレ、この女子」と言ったところで「嘘つけ―」と追い打ちをかけられそう。
伊藤たかみ『ミカ×ミカ!』は、『ミカ!』の続編です。(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します)
『ミカ!』は、小学生の双子ミカとユウスケの日々を描いていて、読んでいるうちに癒されてくるような、温かみのある作品でした。
『ミカ×ミカ!』では、中学生になったミカとユウスケにあえます。前作は、家族の問題を扱っていましたが、本作品は、ミカとユウスケそれぞれの恋愛模様がストーリーの中核をなしています。
離れ離れになった母さんや姉さんは登場せず、前作のような ほっこり感を期待していると外してしまうかもしれません。好きな人で頭の中がいっぱいという、思春期の頃の甘酸っぱい感傷をくすぐる作品です。あぁ、こんなじれったさがあるよなぁ、という。日々の出来事が、ユウスケの優しい目線から描かれています。
前作では、オトトイがストーリで重要な役割を担っていました。オトトイは、ミカの悲しみ涙に触れると大きくなるという不思議な生き物です。本作品では、ユウスケとだけ言葉を交わすことができる青いインコ シアワセが登場します。シアワセは、ミカの恋を成就させようと奮闘するのです。
オトコオンナ(男まさりのユウスケ的表現)のミカは、中学生になって、サッカー部の畑山に恋をします。しかし、ミカに女性を感じない畑山は、ミカを振ってしまいます。シアワセからその話しを聞いたユウスケは、女らしく変わっていこうとするミカを前に、戸惑いを隠せません。いつものミカじゃない。そんなユウスケへも、告白する女子ちずるが現れて ・・・
グループでいるときのちずるは陰険なのに、一人でいるときのちずるは優しいコです。うんうん。中学生の女子って、こういうギャップがあったよなぁ、と自分は懐かしく思います。うんうん。このギャップで恋をしてしまったりするのです。自分もそうでした。
ミカとユウスケの恋はどうなる?ミカとユウスケの父さんの新しい恋も盛り上がって、ストーリーはクライマックスへ。本作品は、ピュアな気分に浸りたいならおすすめの一冊です。
もっとも 自分の場合は、ミカと自分の長女が重なってしまうのですが。
- その他の伊藤たかみ 作品の感想は関連記事をご覧下さい。