思うに任せない高校生たちの日常を描いた青春小説です。左手の親指が長すぎる主人公。幽体離脱をしたことを契機に、親指を通して人の悲しみを知ることになります。
【本の感想】伊藤たかみ『リセット・ボタン』
自殺志願者が集まるホーム・ページで、大学生の”僕”は荻原ミサと出会います。”僕”は、ミサが遺書を書く場所として自分の部屋を提供することにしました。遺書を書き終えた時、ミサは自ら命を絶つと言います。ここから、”僕”とミサの期限付きの暮らしが始まります ・・・
伊藤たかみ『リセット・ボタン』を一言で表すなら、薄っぺらいとなるでしょうか。
男女の出会い方から、半同棲生活の始まり、そしてその行く末まで、重い内容ながらも読んでいて気持ちがざわめくことがありません。登場する二人に、性というものを感じないからでしょうか。
本作品を例えて言うなら、二次元の物語のようです。それだけ、生身の姿を思い描くことが難しいのです。
”僕”はミサに好意を寄せ、自殺を防ぐために手を尽くすのですが、このくだりも想定の範囲内でしょう。こうなるだろうと思う通りに物語が展開するのは、ある種の満足があるのですが、そのまんまだと刺激は皆無です。
ミサの動機が明らかにされない思わせぶりに、命の重みに対する軽薄さが感じられて、どうにもいただけません(リセット・ボタンっていう表現がどうもね)。登場する脇役の存在も疑問です。締めくくり方を含め、残るものが殆ど無い作品でした。
自分が歳を取ったということなのかもしれないけれど・・・
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