【本の感想】A・J・クィネル『メッカを撃て』

本の感想 A.J.クィネル『メッカを撃て』

A・J・クィネル(A. J. Quinnel)『メッカを撃て』(The Mahdi )は、アメリカ、イギリス、ロシアが手を組んで、イスラム世界をペテンにかける驚天動地のエスピオナージです。

CIA作戦部長モートン・ホークは、マレーシアに隠棲している老スパイ プリチャードからイスラム世界を転覆するためのアイディアを授かります。それは、イスラム歴千四百年に出現するといわれる預言者=マハディをでっちあげ、十億人のイスラム信徒を思うがままに操ることでした。

ホークは、イギリスMI6へ、共同の作戦行動を持ちかけます。アメリカの権益を護るため、イギリスを露払いにしようというのです。MI6の作戦副部長ピーター・ジンメルは、アメリカの意図を察知しつつも、この奇想天外な作戦”ミラージュ計画”へ関与していくのでした ・・・

ミラージュ計画は、メッカ巡礼で集った300万人のイスラム教徒の目前で、奇跡を演出するというものです。生贄の羊を、スペースシャトルから照射したレーザで破壊し、神のみ業に見せかけるという作戦。マハディに選ばれたのは、砂漠の無知な修行僧アブ・カディル。CIAの息のかかったアラブ人ハジ・マスタンが、従者としてアブ・カディルを操縦します。アメリカ、イギリスそれぞれの利権が交錯する中、CIAチーム、MI6チームの共同作戦が、紆余曲折しながら進んでいきます。

この過程はわりと退屈です。本作品のホークと、ジンメルの人となりや、信頼関係がかたちづくられる様がじっくり描かれていきます。冗長と感じるのですが、これがあるからラストに感慨がうまれるから辛抱です。

CIA、MI6の作戦行動は、やがてKGB海外作戦本部長ワシーリイ・ゴルディックの察知するところとなります。ゴルディックは、ジンメルのロマンチストの性向を利用しようと、バレリーナ マヤ・カシューヴァをスパイとして送り込むのでした。 ・・・

このあたりから、CIA、MI6、KGB三つ巴になり、ストーリーは展開します。やがて、手違いからミラージュ計画は、アラブ人過激派の知るところとなり ・・・ とつづきクライマックスを迎えます。

はたして、ミラージュ計画は成功するのでしょうか。最後の最後におとずれる予想外の大ピンチ。ラストは、驚愕のどんでん返しが待っています。最終ページを読み終えたとき、このペテンの裏側にある秘密を理解し、本作品が大傑作であることを思い知るのです。

イスラム世界についてもお勉強になる一冊でした。

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