2019年5月9日 / 最終更新日 : 2020年8月5日 レペ 国内小説 【本の感想】長嶋有『猛スピードで母は』 無邪気に親と向きあうでもなく、かといって割り切ることも無視することもできない。なんとなく誰かが傷つくことを恐れてしまう。そんな子供の心情が、簡潔で淡々とした文章から滲み出てきます。
2019年5月3日 / 最終更新日 : 2020年8月5日 レペ 国内小説 【本の感想】村上龍『限りなく透明に近いブルー』 ドラックと乱脈な性の中で日々を過ごす青年を描いた作品です。自身の今についての悔悟とか、未来への希望や絶望とかが殊更、語られるでもなく、ただこの時のみという刹那的な生き方を強く感じます。生々しい描写と突き放したようなクールさに衝撃を受けます。
2019年4月25日 / 最終更新日 : 2020年8月18日 レペ 国内小説 【本の感想】諏訪哲史『アサッテの人』 失踪した叔父の、言葉にまつわる奇妙な行動の原因を、小説という手段を使って解き明かすという物語です。哲学的な意味合いが多分にあるのでしょうが、深読みしなくても十分に楽しめる芥川賞受賞作品です。むしろ笑ってしまうかもしれません。
2019年4月23日 / 最終更新日 : 2020年8月18日 レペ 国内小説 【本の感想】綿矢りさ『蹴りたい背中』 女子高生の孤独を描いた作品です。平易な言葉の組み合わせで、感情の広がりを表すことができる19歳(当時)の綿矢りさ、おそるべし。孤独に直面して、気持ちになかなか整理がつなかい主人公ハツの真っ直ぐさが、愛おしくなってしまいました。
2019年4月12日 / 最終更新日 : 2020年8月18日 レペ 国内小説 【本の感想】中村文則『土の中の子供』 自己破壊衝動を持つ男の物語ですが、ありきたりトラウマ話に陥っていません。自身を滅するごとき行動は、過去を乗り越えるための通過儀礼として描かれています。タイトルの意味から、再生への希望を窺い知ることができます。
2019年4月10日 / 最終更新日 : 2020年9月9日 レペ 国内小説 【本の感想】吉田修一『パーク・ライフ』 純文学が表しようのないものを文章にする文学ならば、何もないことをしたためている 吉田修一 『 パーク・ライフ 』も純文学なのでしょう。何もないのに詰まらなくないのが素晴らしい。ハッピーもアンハッピーもない。フツーであることがとても心地良い。 『 パーク・ライフ 』はそんな作品です。
2019年3月25日 / 最終更新日 : 2020年9月23日 レペ 国内小説 【本の感想】川上弘美『蛇を踏む』 著者の言によると「うそばなし」だそうです。騙してやろうの「うそ」でなくて、そういうことがあってもいいんじゃないかという「うそ」なのです。「本当」の中に「うそ」を持ち込んで、その「うそ」を「本当」の遊び場にしてしまうテーマパーク的な感覚があります。
2019年3月20日 / 最終更新日 : 2020年8月18日 レペ 国内小説 【本の感想】朝吹真理子『きとこわ』 幼年時代のひと時を共に過ごした7歳違いの貴子と永遠子は、25年の歳月を経て再会します。朝吹真理子 『 きとこわ 』では、二人の間にたゆたう現実とも夢幻ともつかぬ時の流れが、美麗な言葉でつづられます。細やかな表現をリフレインし、絵画的とも言える忘れがたいシーンを構築しています。