【本の感想】朝吹真理子『きとこわ』

本の感想 朝吹真理子『きとこわ』

2011年 第144回芥川賞受賞作。

幼年時代のひと時を共に過ごした7歳違いの 貴子と永遠子。25年の歳月を経て再会する二人にたゆたう現実とも夢幻ともつかぬ、時の流れが美麗な言葉でつづられます。

表現し難いものを如何に表現するのが純文学ならば、まさに朝吹真理子『きとこわ』は、純文学の真骨頂をみることになるでしょう。ごく少ない頁数でありながら、細やかな表現をリフレインし、絵画的とも言える忘れがたいシーンを構築しています。

タイトルは 貴子(きこ)と永遠子(とわこ)二人の名前であり、彼女たちの曖昧に溶け合う記憶をあらわしているようです。この、とろりとした感覚が良いですね。文章から肌触りを感じます(もちろん脳内で、ですが)。本作品の感想を書いてはみたものの、この感覚を上手く表現することはできません。これだけで著者と自分の圧倒的な表現力の違いを見せつけられた気がします。

自分は、文学賞受賞作が好きでよく読みますが、本作品の美的感覚にはとても感銘を受けました。何か特別な事件が起こるわけではないので、小説にエンターテイメントを期待するのであればハズします。 まぁ、純文学のほとんどは、何もおこりませんか。

朝吹真理子作品は、本作品以外は読んだことはありませんが、寡作な作家さんなんですね。美しい作品を作りあげるのは時間がかかるものなのかな。