【本の感想】中室牧子 、 津川友介『「原因と結果」の経済学』

中室牧子、津川友介『「原因と結果」の経済学』

中室牧子、 津川友介『「原因と結果」の経済学』は、データの因果関係を導き出すための思考法を解説した経済書です。

統計データの不正云々が取り沙汰される昨今。仮に統計データに誤りや改竄がなかったとして、どれほどの人が正しくそれを読み解く事が可能でしょうか?嘘つき―!という前に、力をつけることが必要なのです(統計データの不正が良いと言っているわけじゃありませんよ)。

自分は、データを提示されて尤もらしく説明されると、概ね納得するのが常です。真実が見抜けていないという証左でしょう。悪意がなくともデータを提示する側、見る側に理解が不足していると、誤った解釈がなされてしまいます。

本書を読むと、漠然と分かったつもりになっていた因果関係、相関関係について明快になります。因果関係という統計用語はどこでも安易に使われていますが、データを見ていく上ではその意味を正しく理解する必要があるのです。恣意的なデータ解析に陥らないための思考は、なくてはならないもの。

本書は、例えば、「メタボ健診を受けていれば長生きできるのか」「認可保育所を増やせば母親は就業するのか」等、世の中的に正しいと周知されている事柄の誤りを解き明かしています。目からウロコとまではいきませんが、信じて良いかもぐらいの納得性はあります。

本書は読み物的であるので、高度な数学の知識がなくても理解できるはずです。別の機会に計量経済学の何たるかにも触れてみたいと思いますが、本書から一歩前進しようとすると、自分のような文系には辛いかもしれませんね。恥ずかしながら、計量経済学という学問の領域は初めて知りました。

本書には、「前後比較デザイン」「反事実」「介入群・対照群」「差の差分析」「操作変数法」「回帰不連続デザイン」・・・等、勉強になるワードが多数記述されています。一読では分かったつもりになったまでですから、使わなければいずれ忘れてしまうのでしょうけれど。

自分は、仕事上「相関関係はありそうだけど、因果関係はないね!」ぐらい言えるようにはなりました。何だか、イヤな奴になってきたな・・・