先生が悪辣な生徒に復讐を誓うという、まぁまぁお目にかかるプロットの作品です。妻を死に追いやった生徒たちを、元特殊部隊隊員の先生が野獣の如く狩りたてていきます。
【本の感想】ジョー・ゴアズ『死の蒸発』
ジョー・ゴアズ(Joe Gores)と言えばダン・カーニー・アソシエイツ(DKA)シリーズが代表作。ダン・カーニーを筆頭とした探偵事務所の面々が活躍するハードボイルドです。
そもそもこの探偵事務所は、代金未払いの車を債権者の依頼に基づき回収することを生業としています。派手なアクションやハラハラドキドキは無縁のように思えますが、なかなかどうしてスリリングな展開が待っているシリーズなのです。
『死の蒸発』(Dead Skip)(1972年)は、DKAシリーズの第1弾(DKA探偵事務所ファイル1)。
DKAの所員バートが何者かに殴打され、瀕死の重傷を負いました。回収したばかりのジャガーと共に崖から突き落とされたため、警察はバートによる自損事故を疑います。同僚の駆け出し探偵ラリー・バラッドは、バートの無実を信じ、バートとその恋人コリンのため犯人を追うことを決意します。ダン・カーニー所長から与えられた時間は、72時間。期限までに事件を解決することを指示されたバラッドの、不眠不休の追跡劇が始まります・・・
バートの残した書類から、犯行の可能性のある6人の人物を洗い出すバラッド。本作品は、まさに、足で捜査をする探偵ものです。カーニーは、厳しい指示を与えながらも、裏で捜査のサポートをしています。この親心(!)が良いのです。
捜査が進むうちに6人それぞれにアリバイがあることが判明し、疲労困憊のバラッドは窮地に陥ります。そして、迫りくる謎の影によって絶体絶命の危機に晒されたバラッドは・・・とクライマックスを迎えます。
このあたりは、スリル満点。多少読み返さなければいけない(と思う)のですが、ラストは意外な犯人が判明するので、謎解きミステリとしても楽しめます。
本作品では、バラッドは探偵稼業二年目の20代です。シリーズが進むにつれて、バラッドが成長していくのを予感させます。ボクサーあがりのバート、才媛のジゼルら探偵事務所の面々もどういう活躍を見せてくれるのか、期待が膨らみます。
なお、本作品には、リチャード・スタークの悪党パーカーが出演し、カーニーと会話するシーンが挿入されています。このシーンは、『悪党パーカー/掠奪軍団』 でパーカーの側から描かれているようです。こういう巨匠たちの遊び心が楽しかったりします。
(注)読了したのは角川文庫の翻訳版『死の蒸発』で、書影は原著のものを載せています。
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