【本の感想】ジョー・ゴアズ『目撃者失踪』

ジョー・ゴアズ『目撃者失踪』(原著)

ジョー・ゴアズ(Joe Gores)『目撃者失踪』(Gone、 No Forwarding)(1978年)は、債権回収専門の探偵社 ダン・カーニー・アソシエイツ(DKA)シリーズの長編第三弾です。

州当局が、DKAに対して、探偵業認可取消しの訴えを起こしました。自動車ローンの未払い金の扱いに関する不正処理を衝かれたのです。DKAは、主任のキャシー・オノダが提訴の少しまえに病死していたため、経緯を明らかにすることができません。ラリー・バラード、バート・ヘスリップら探偵たちは、既に辞めてしまった当時の従業員の証言を集めるために奔走し始めます。

公判が開始されるものの、探偵たちの捜査は遅々として進みません。DKAにとって、絶対絶命のピンチが訪れます・・・

本作品は、法廷ミステリの趣もあり、見所満載です。丁々発止の法廷論争と並行して、探偵たちの不眠不休の捜査活動が展開されていきます。タイムリミットが迫るなか、探偵たちは有力な証人を見付け出すことができるのでしょうか。

当時の三人の元従業員の行方は、杳として知れません。あらゆる手練手管を使って探し出したものの、元従業員らは一癖も二癖もあるヤツらばかり。捜査の過程で登場する人物が多くて、誰が誰なのやらというのが本シリーズの悩ましいところです。

ハラハラドキドキは素晴らしいのですが、人物の相関関係を整理しなければ読み進められないのが難点。くわえて捜査活動が錯綜するため、読者の混乱に拍車をかけてしまいます。

事件の裏側には、前作『赤いキャデラック』の顛末と絡んだ意外な真実があります。ビックサプライズとはいかないものの、胸のすく思いを感じることができるでしょう。

残念ながら、本作品では、カー二―の活躍いまいち。最後はどっしりと決めて欲しいのですが、部下たちの成長に助けれたという格好でしょう。

それにしても、キャシー・オノダの死はあっけなさ過ぎですね。ちょい役だけど、シリーズキャラクターなのにぃ。

(*)読了したのは角川文庫の翻訳版目撃者失踪で、書影は原著のものを載せています。

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