【本の感想】ビル・プロンジーニ『死角』

ビル・プロンジーニ『死角』(原著)

1981年 週刊文春ミステリーベスト10 総合 第10位。

ビル・プロンジーニ(Bill Pronzini)『死角』(Labyrinth)(1980年)は、名無しの探偵シリーズの第6弾です。

クリスティーン・ウェブスターの射殺死体が発見され、名無しの探偵の名刺を持っていることが判明しました。ところが、探偵は、クリスティーンについては全く覚えがないのです。折しも舞い込んだマーティン・タルボットのボディーガードの仕事を遂行しながらも、事件のことが気にかかる探偵。

そんな中、警護中の探偵の前で、タルボットが殺人を犯してしまいます。タルボットの無実を確信した探偵が捜査に乗り出すと、クリスティーンの事件との関連が浮かび上がってきます・・・

相変わらず作品中で名前が明らかにならない”名無しの探偵”です。シリーズを読み進めていくとやがて分かるらしいのですが、6,000冊のパルプ・マガジンのコレクションを持つ、ウェイトオーバーな52歳の孤独な探偵が主人公のシリーズです(コレクションが1,000冊増えた!)。警察組織と協力をしながら、地道な捜査で、成果を上げていくという、どちらかというと地味なストーリー。

見所は、全く関係のないように見える2つの事件が、複雑に絡み合ってラストで収斂していくところでしょう。解決にあたり偶然が重なり合って、と作品中で表明しているものの、そんなに無理やり感はありません。意外なラストも用意されているし、ボリュームが少ないだけに、スッキリとまとまっている印象です。

シリーズ第5弾、コリン・ウィルコックスとの共著『依頼人は三度襲われる』を読み飛ばしてしまいました。そもそも、自分は、シリーズものを順序良く読む方ではないのですが、ちょっぴり後悔・・・。

(注)読了したのは新潮文庫の翻訳版『死角』で、 書影は原著のものを載せています 。

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