生活苦から逃れるためにギャバ嬢として働き始めた女子の成長物語です。タイトルからポップな内容を期待しましたが、水商売の裏っ側が描かれていてシリアスな展開です。その道のノウハウ本のような趣もあります。
【本の感想】桂望実『もしも、あと少し、幸せになれるとしたら。』
桂望実『もしも、あと少し、幸せになれるとしたら。』は、二十代から四十代、四人の女子の人生模様が描かれた短編集です。
タイトルの通り、何かを手に入れようとしても、思うに任せない時を読み取ることができます。婚活女子、主婦、キャリアウーマン、自営業と、彼女たちの望みは様々です。これは男性にも通じるお話であると、読み進めながら感じ入っていまいました。
4編に共通する人物は、足裏マッサージ店のオーナー 浜田舞子。舞子が、4人を癒しながら、さりげなく励ましの言葉を贈ります。
■真樹 二十九歳
中川真樹は、彼氏いない歴二年目に突入し、焦りを感じています。合コンだ、パーティーだと、婚活に勤しむ日々。仕事は腰かけ気分でしたが、勤務する会社が身売りしてしまいリストラの危機です。切羽詰まった真樹は、ますます婚活に拍車をかけます・・・
アンテナを張り巡らし、男性を値踏みする真樹の心の声が、鳥肌ものです。思い通りにいってたまるか、と意地悪な感情が芽生えてしまいます。全身全霊で婚活というのも潔くはあるのですが。
■佳乃 三十四歳
森佳乃は、夫 宏輝、息子 洋介の三人家族。佳乃は、今の自分に満ち足りないものを感じ、何かを始めるべきだと考えています。そんな中、同窓会であった昔の友人たちの輝いている今を目の当たりにし、噛み合わない会話に、心を乱されてしまうのでした・・・
女子も三十代となると人生色々です。何かを始めたくても、その何かが見つからない。焦りだけが募っていくというのは、男女問わずよく見る光景です。自己実現ねぇ・・・。今が一番の幸福の時と、過ぎ去ってから気付く人は、多いのではないでしょうか。
■めぐみ 三十九歳
里見学園企画部長は、黒木めぐみは、殊更キャリア志向ではなかったものの、ヘッドハンティングから順調に昇進を重ねています。九歳年下の恋人 長谷川和徳には少々煩わしい思いをするものの、今までの交際相手とは違ったものを感じています。ある日、めぐみは、園長の松本から次の園長就任を申し出られるのでした。そして、和徳からは結婚という言葉が・・・
図らずもキャリアウーマンとして活躍している女子が、仕事に恋にと葛藤します。なるほど、これは男性視点では語れない作品です。ただ、三十歳になる和徳は、あまりに立ち振る舞いが幼すぎませんかねぇ?
■治子 四十五歳
インポートセレクトショップのオーナー細川治子は、バツイチ。二人の子供たちは、元旦那 岡田克重に引き取られ、二十年の月日が経っています。治子のショップは、現在、経営難。借金の申し込みをしようと、克重や昔の交際相手と連絡を取るのですが・・・
独立した女性の切羽詰まった感が、ひしひしと伝わる作品です。良い時の思い出が、借金の申し出を口にしようとした途端、もろくも崩れ去っていきます。どうなってしまうのだろう、と思ったところで娘 亜美がふらりと現れ、治子に気付きを与えます。ラストを飾るに相応しい元気の出る作品です。
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