【本の感想】サイモン・シン『フェルマーの最終定理』

本の感想 サイモン・シン『フェルマーの最終定理』

サイモン・シン『フェルマーの最終定理』は、ピタゴラスから、アンドリュー・ワイルズまで、数論とそれに情熱を傾けた数学者の歴史をひもときつつ、フェルマーの最終定理がいかにして証明されたかの足跡を著わすものです。

元来、自分は数学について劣等感を持っている文科系。メガネと蝶ネクタイの少年が言う『真実はいつも一つ』が苦手なのです。できれば、曖昧という名の温室で、玉虫色の花を育ててくらしたい、と。高い評価を得ている本書。手にとってみたものの、パラパラめくって目につく数式に軽い貧血をおこしてしまいました。

しかしながら、読みはじめると、数学アレルギーはおこりません。四則演算だけわかればいい。むしろ、文科系だからこそ、数学者が美しいもの、エレガントであるものに魅了される心情が堪らなく理解できるのです。

たった一つの小さな綻びが、積み上げたすべてを台無しにしてしまう数論の世界。定理として確立されたものは、未来永劫、真実となります。そのために、人生を捧げ、苦悩し、挫折し、あるときは命を奪われ、報いられたものは成功を手にします。

手にしたものが、世の役にたつかは別。なんとロマンチックなのでしょう。少年アンドリュー・ワイルズが夢みて、フェルマーの最終定理の証明を完成させたとき、そのテクニックには、過去の数学者の人生が織り込まれているのです。

数学教育には、詰め込みではなくて、美しさをきちんと教えるべきなのかもしれませんね。天才には情熱という燃料が必要なのです。数学嫌いな自分にも感動を与えてくれたサイモン・シン恐るべし。噂にたがわぬ名著です。

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