【本の感想】レスリー・デンディ 、 メル ・ボーリング 他『自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝』

レスリー・デンディ , メル ・ボーリング他『自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝』

レスリー・デンディ(Leslie Dendy)、 メル ・ボーリング(Mel Boring) 他『自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝』は、自分の体を使って様々な実験を試みた科学者たち(うち一人は、インテリア・デザイナーの女性)の、10章からなる命懸けの物語です。お馬鹿な奇人列伝を想像して本書を手に取ったのですが、いやいや、どうして、予想外の感動をしてしまいました。

本書の原題はGuinea Pig Scientists。まさに、モルモットとなった科学者たちの列伝です( Guinea Pig は、モルモットの意味)。

名声、好奇心、使命感、自己実現、はたまた蛮勇か。身体を壊し、命を失っても遂げなければならないものとは一体何なのか。 科学者たち迸る情熱は、読者の胸をアツくさせるでしょう。やるせないことに、命を賭したとしても、自己顕示欲の表れとして批判に晒されることもあったようです。

危険な空気を吸いつづけた親子の章 ジャック・ホールデンの言葉が印象的です。

危険のない人生は、マスタードをつけない牛肉のようなものだ。だが、私の人生は役に立つのだから、登山や自動車レースのようにただ危険のための危険を追いもとめるのは間違っている

これは、本書に登場する科学者たちの精神に通底しているようです。 彼らのおかげで多くの人体の謎が解明され、人々が救われてきたのです。本書からは、後世に残した(一般的には)名の知れぬ偉人達の足跡を読み取ることができるでしょう。

本書のコーヒーブレークのちょっとした小ネタがやけに親切丁寧と思ったら、本国では、小中学生向けの本として出版されているとのこと。確かに、子供たちに読んで欲しい一冊です。

そういえば、海鞘(ほや)を最初に食べた人は凄い!という言を、よく耳にします。科学者じゃなくても体を張った人々のドラマは、色々と見付けられそうですね。

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