【本の感想】藤沢周『死亡遊戯』

藤沢周『死亡遊戯』

自分が学生の頃の札幌は、ススキノだけじゃなく、あちこち点々と風俗街がありました。夜10時ぐらいになると、コワイお兄さんらがストリートにぽつぽつといて、通りすがりに声をかけてきます。自分のような、見るからにビビッてるのはスルーしてくれるんですが、虫の居所が悪いようなお方は、「どう?」「あー!」なんて威嚇してきたりして。今は、すっかりクリーンな街になりました。北2〇条なんか、えげつない感が全くなくたってしまった・・・

藤沢周『死亡遊戯』は、風俗のキャッチの男のアブナイ話。そして、同時収録された『DS(ドミネーション・サブミッション)』は、変わった性癖の男に執着されるアブナイ話。要するにアブナイ話二作品です。

『死亡遊戯』は、藤沢周の処女作とのこと。J文学という徒花の一冊です(今もってJ文学ってハテナ?なのですが)。

■死亡遊戯
『死亡遊戯』といえば、自分とってはブルース・リーですが、本作品は、映画のオマージュでもパロディでもありません。

新宿・歌舞伎町で、風俗のキャッチを生業にする俺の日常が描かれた作品です。読み進めると、多国籍な暗黒街に息づく男と女の、性欲と暴力がぷんぷんと匂い立ちます。ヒリヒリとした緊張感や、抜け出しようがない底辺感を味わうことができるでしょう。とは言え、物語として面白いかというのとは別です。

とんずらした風俗嬢と、それに巻き込まれたかのように、別のヤツと間違えられその筋の者達にボコられる俺・・・そして・・・。

と、俺の日常は、それでも続いていくのです。

DS(ドミネーション・サブミッション)
俺が、伝言ダイヤルで知り合いしけこんだ女 雅美。ある日、雅美の旦那 浜田信男と名乗る男から声を掛けられます。浜田は、雅美を脅せ、と俺に要求を突きつけるのでした・・・

信男は、在宅している時に、俺に雅美への脅しの電話を掛けさせます。びびっている雅美の姿を見て悦に入る信男。繰り返し、同じことをするよう執拗に俺に迫ります。信男は、俺、そして妊娠中の妻のことまで調べあげていたのです。

変わった性癖の男に偏執的に絡まれ、徐々に現実感を喪失していく俺。そして俺は・・・。

本作品は、『死亡遊戯』より、お話として面白いですね。ラストに俺が、愕然としたものな何か。こういう余韻を残す締め括り方は、文学的で好みです。

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