【本の感想】キース・ピータースン『暗闇の終わり』

キース・ピータースン『暗闇の終わり』

キース・ピータースン(Keith Peterson『暗闇の終わり』(The Trapdoor)(1988年)は、新聞記者ジョン・ウェルズが主役のハードボイルド シリーズ第一弾です。ハードボイルドとは言え、本作品では、らしさは薄口です。

『ニューヨーク・スター』紙のジョン・ウェルズは、自身のスタイルを貫く頑固で孤高のトップ記者。15歳の娘オリヴィアに自殺された過去を持つ、男やもめです。

そんなウェルズに、ソリの合わない上司ロバート・ケンブリッジ編集長は、高校生の連続自殺事件を取材するよう指示を出します。ウェルズの心情を慮るランシング(美人!)、マッケイら同僚たちをよそに、ウェルズは、自殺者たちの周辺へ聞き込みを開始します。娘の死から完全に立ち直っていないウェルズ。取材を通して自身の辛い過去に折り合いをつけていけるのか、が本作品の注目ポイントです。

第一の自殺者ナンシー・スコフィールド、第二の自殺者フレッド・サマーズ、第三の自殺者ミッシェル・セイヤーズは、グラント・ヴァレイ・ハイスクールに通う高校生。6週間の短い期間に、彼らは立て続けに亡くなってしまったのでした。ウェルズは、デイヴィッド・ブラント校長、そして、それぞれの一家へインタヴューを試みますが、三人それぞれの事情はあるものの共通点は見出せません。

自殺者の親族の協力の上でまとめたウェルズの記事は、上司の改竄のために自殺者らを貶めるものとなってしまいました。現場へ再度赴いたウェルズが目にしたのは、ウェルズへの住民たちの訴訟に発展するほどの厳しい糾弾。そして、最初から快く思っていなかったタマニー・バード 警察署長の強権的な警告です。

窮地に陥ったウェルズは、真相を探るべく手がかりを求め、そしてコンタクトをしてきた男子高校生クリス・トーマスの証言から、糸口を掴むのでした。自殺者ホットラインのボタンティアスタッフをしていたミッシェルが恐れていた死神と誰か。ウェルズは、圧倒的に不利な状況下において、芋ずる式に真実を手繰り寄せます。このウェルズの不屈の闘志は、シリーズ共通です。

本作品は、家族のあり方にも触れらています。果たして、ウェルズは、自身の娘の死を克服できたでしょうか。事件の顛末は、そこそこ予想外で楽しめるし、第一弾としては上々の滑り出しです。

ジョン・ウェルズ シリーズは、『幻の終わり』『夏の稲妻』『裁きの街』と続きます。ハードボイルドっぽさは、シリーズを追うごとに強めになります。(それと、ランシングのいい女っぷりも!)。(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します

ウェルズと良い仲になるチャンドラー・バーク、そして、ウェルズに気持ちを寄せるランシングを含め『ニューヨーク・スター』紙の面々のその後が気になります。

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