【本の感想】綿矢りさ『憤死』

綿矢りさ『憤死』

綿矢りさ『憤死』は、タイトル作を含む四作品が収録された短編集です。著者初の短編集なんですね(?)。

著者の作品は、シリアスであっても、コミカルであっても精神的な孤独感が漂っていて、そこに魅力を感じます。しかしながら、本作品集は、世にも奇妙な物語的なホラー風味のもので、結論から言うと、期待を外されてしまいました(タイトル作だけは、愉しいのですよ)。

■おとな
5歳の”りさ”の視点で、大人の夜の営みがつづられたショート・ショート。夢か現か幻か・・・。

■トイレの懺悔室
近所の風変りの親父(オヤジ)から、懺悔を強要された小学生のおれと、ゆうすけら仲間たち。親父が神父役で、親父の家のトイレが懺悔室でした。その後長らくご無沙汰だったのですが、小学校の同窓会で、おれは、ゆうすけらと再会します。ゆうすけが言うには、高校二年まで親父と交流があったようです。二次会は、ゆうすけに誘われるまま、親父の家を訪ねることにしました。そこで・・・

如何にもなモダン・ホラーですね。著者の作品では、お目にかかったことがないテーマなので、戸惑いを感じてしまいました。

■憤死
小中学の友達 佳穂の自殺未遂の報を聞き、わたしは、子供の頃からの佳穂の思い出を反芻します。佳穂は、ゲロ子と蔑まれていたわたしを、家来扱いしていたのです。長じてからも、アメリカ留学を経験した佳穂は、わたしに対して「自慢の露天商」。そんな佳穂の自殺の理由とは・・・

気持ちがささくれ立つもののニヤリと笑いを誘う、著者らしい作品です。佳穂と面会した後の、わたしの内心の一言が軽やかで良いですね。

■人生ゲーム
人生ゲームに興じる小学生たち。それを見ていたコウキの兄の友達が、「 おまえたちは必ず不幸になる」と告げます。その予言の通り、人生ゲームに絡め取られる如く、大人になった仲間たちが不幸な死を遂げるようになるのです。そして、ついに・・・

未来を予見した高校生「おたすけマン」は誰?これまたスーパーナチュラルなお話ですが、オチが弱いですね。なんのこっちゃ・・・

本作品集は、つまらないわけではありません。しかしながら、自分は、著者にこういうのを求めてないんですよねぇ。『大地のゲーム』も同様ですが、少なからず迷走を感じてしまいました。

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