【本の感想】ダン・シモンズ『サマー・オブ・ナイト』

ダン・シモンズ『サマー・オブ・ナイト』(原著)

1992年 ローカス賞 ホラー部門受賞作。

ダン・シモンズ(Dan Simmons)『サマー・オブ・ナイト』(Summer of Night)(1991年)は、甦えった邪悪な悪霊との闘いを描く、至極ストレートなゴシック・ホラーです。

ただし、死闘を繰り広げるのは、七人の小学生たち。大人は中々理解してくれない系のイライラをはらみつつ、ストーリーは展開していきます。読み進めると、子供らしい無邪気で無謀な勇気が頼もしくもあり、痛々しくもあるという何とも複雑な気持ちになるでしょう。

本作品は、翻訳1、000頁を超える大作で、前半は1960年 イリノイ州のトウモロコシ畑に囲まれた田舎町と、そこで暮らす人々の人間模様がじっくりと描かれます。

創立から84年を迎え、廃校が決まったオールド・セントラル。終業式の日、生徒のひとりタビーが、校内で突然姿を消してしまいます。子供たちが行方不明を訴えても、教師らは耳を貸しません。自転車パトロール隊のディルとローレンス兄弟、ケヴィン、マイク、ジムは、自らタビーを見付けようと、学校関係者を見張ることにします。何時もの他愛もない遊びのはずだったのですが、その頃から、生き返った死人や、不気味なモノが子供たちの周りに姿を見せ始めるのでした。

まさにスティーヴン・キング『スタンド・バイ・ミー』のような世界であって、怪異はチラ見せ程度にしか現れません。子供たちの日々の生活、友情や軋轢、家族の関係が語られる中から、彼らの個性が浮かび上がってきます。あぁ、この子は自分に似ているなぁと、知らず知らずのうちに感情移入してしまうのです。この前半部があるからこそ、怒涛の後半では、冷や汗をかきながら子供たちの活躍を見守ることになります。

後半は、子供たちがそれぞれの個性を遺憾なく発揮し、また自身の弱さを克服しながら、悪霊に立ち向かう姿に興奮することしきりです。おまけに、熱い家族愛が泣かせてくれます。知力体力振り絞りながら、逆境をはねのけていく子供たち(子供が銃を携えるあたりは、銃社会ならではで違和感ありですが)。果たして、闘いの行方は!

本作品は、ホラー好きにはオススメの一冊ですが、グロテスクなシーンが随所に見られるので、これが苦手な方は注意されたし。なお、マイクの他、自転車パトロール隊(バイク・パトロール)の面々は、『夜の子供たち』、『エデンの炎』などなど、以降の作品で大人になって再登場します。 (リンクをクリックをいただくと感想のページへ移動します

(注)読了したのは扶桑社文庫の翻訳版『サマー・オブ・ナイト』で、 書影は原著のものを載せています。

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