【本の感想】ダン・シモンズ『ザ・テラー 極北の恐怖』

ダン・シモンズ『ザ・テラー 極北の恐怖』上巻

ダン・シモンズ(Dan Simmons)『ザ・テラー 極北の恐怖』(The Terror)(2007年)は、19世紀中頃、英国の北西航路発見を目指したジョン・フランクリン探検隊の全滅史です。史実である総員125名遭難事故を題材にしていますが、探検行は、(もちろん)シモンズの創作です。

北緯70度近辺で行く手を阻まれ、にっちもさっちもいかなくなった探検隊一行。彼らは、旗艦の艦長フランクリンの判断ミスで、数年に渡る遭難に見舞われてしまいます。

本作品の舞台は全編、北極圏です。進退窮まった、とはこのこと。前進することも、引き返すこともできません。

超がつく酷寒の中、尽きていく食料と燃料、蔓延する壊血病。著者は、まるで近くで見てきたかのようなリアルな残酷さをもって、凄惨極まりない隊員たちの姿を活写していきます。さらに、舌を切り取られた謎のイヌイットの女性、そして不死の異界の怪物を登場させ、 スパーナチュラルな要素を加えてストーリーを盛りあげます。異界の怪物が、いきなり現れては、隊員らを破壊といってもよいほどに蹂躙しまくるのです。打つ手なしの絶望的な状況というハラハラドキドキに、ページを繰るスピードは、間違いなくアップするでしょう。

徐々に斃れていく隊員たち。はてさて彼らの運命は・・・と後半に続きます。

ダン・シモンズ『ザ・テラー 極北の恐怖』下巻

飢え、病、仲間割れ、そして異界の怪物により主要な登場人物たちが、どんどん命を落としていく後半。特にキーマンと思っていた人物が、意外なところで死んでしまい、読者の不安を搔き立てます。怪物との凄まじい戦いを生き残ったあの隊員がこんなことに・・・(未曾有の危機にあっても格式を重んじる所作が、英国ぽくありますね)。

全滅するのは決定されているので、さてさて、どのように決着をつけてくれるかが興味の中心です。異界の怪物とイヌイットの女性の関係が明かになるにつれ、物語はクライマックスへ向かっていくことになります。これ以上あらすじを書くのは、ネタバレなのでココまでです。

本作品は、文庫1,000頁を越す大著であり、読了するまでに骨が折れるものの、冒険小説+伝奇ホラーとして満足度がとっても高い仕上がりです。

本作品は、2018年 ジャレッド・ハリス、トビアス・メンジーズ 出演『ザ・テラー』としてドラマ化されています。

2018年 放映 ジャレッド・ハリス、トビアス・メンジーズ 出演 テレビドラマ『ザ・テラー』
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