【本の感想】ダン・シモンズ『エデンの炎』

本の感想 ダン・シモンズ『エデンの炎』
「エデンの炎」(原著)

ダン・シモンズ(Dan Simmons)『エデンの炎』(Fires of Eden)は、『夜の子供たち』と同様、『サマー・オブ・ナイト』のキャラクターが再登場する伝奇ホラーです。本作品では、男勝りのコディが40代のおばちゃんになって活躍します。

不動産王バイロン・トランポ(このモデルは若かりし日のアメリカ大統領!)は、経営の危機を乗り切るため、なんとしてでもハワイ島に所有のマウナペレ・リゾートを売却しようとしています。ところが、このリゾートでは、観光客が行方不明となる事件がたて続けに発生していました。事件を葬り去り売買契約にこぎつけたいトランポ。トランポは、日本人実業家との商談を成功させるため、現地へと向かうのでした ・・・

物語の舞台はハワイ島です。マウナロアとキラウエアの二つの火山が噴火し始め、異形のものたちが、人々を連れ去っていきます。

オレ様キャラのトランポがいい味をだしています。今やお馴染みの人物なので姿、そして言動が思い浮かぶでしょう。俗物はなはだしく、罵詈雑言を吐きまくり、やることなすこと姑息極まりありません。しかしながら、憎めません。悪霊と対峙しても、傲岸不遜な態度が変わらないという徹底ぶりが愉快です。

リゾートを訪れていたエレノア・ペリーと、コーディ・スタンフは人々が失踪する謎を解明しようと動き始めます ・・・

エレノアの持っている手記が、過去のハワイ島の出来事との関連性を明らかにしていきます。現代の事件に示唆をあたえるがごとく、随所にこの手記の記述が挿入されるのです。手記の登場人物が、サムエル・クレメンズ(のちのマーク・トウェイン)。マーク・トウェインの作品に造詣が深ければもっと興味が持てたかもしれません。手記がキーアイテムであることは確かなのですが、エレノアを駆りたてる使命感が、これに起因するというのは納得し難いでしょうか。ハワイ島の伝説にはとても好奇心をくすぐられはするのですが。

物語は、火山灰が降り注ぐ中、悪霊たちが次々を人々を襲うというスリリングな展開です。ハラハラドキドキの中、絶体絶命のピンチを迎えていきます。エレノアとコーディは、謎を解き明かし、悪霊を封印することができるのでしょうか(そして、どうなるトランポ)。クライマックスは、ちょっと意外な様相を呈するのですが、見せ場はたっぷりあります。

なお、本作品には『サマー・オブ・ナイト』、『夜の子供たち』のマイクもちらりと顔を見せてくれます。コディの初恋の人だったことが判明しますが、さて感動の再会は ・・・

(注)読了したのは角川文庫の翻訳版『エデンの炎』で、 書影は原著のものを載せています。

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