19世紀中頃、英国の北西航路発見を目指した探検隊の全滅史です。実際の総員125名遭難事故が題材ですが、探検行はシモンズの創作。文庫1000頁を越す大著であり、読むのに骨が折れるものの、冒険小説+伝奇ホ…
【本の感想】ダン・シモンズ『エデンの炎』
ダン・シモンズ(Dan Simmons)『エデンの炎』(Fires of Eden)は、『夜の子供たち』と同様、『サマー・オブ・ナイト』のキャラクターが再登場する伝奇ホラーです。本作品では、男勝りのコディが40代のおばちゃんになって活躍します。(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します)
不動産王バイロン・トランポ(このモデルは若かりし日のアメリカ大統領!)は、経営の危機を乗り切るため、何としてでもハワイ島に所有のマウナペレ・リゾートを売却しようとしています。ところが、このリゾートでは、観光客が行方不明となる事件が立て続けに発生していました。事件を葬り去り、売買契約にこぎつけたいトランポ。トランポは、日本人実業家との商談を成功させるため、現地へと向かうのでした・・・
物語の舞台はハワイ島です。マウナロアとキラウエアの二つの火山が噴火し始め、異形のものたちが、人々を連れ去っています。
オレ様キャラのトランポが、いい味をだしていますね。今やお馴染みの人物なので、その姿、そして言動が思い浮かぶでしょう。俗物はなはだしく、罵詈雑言を吐きまくり、やることなすこと姑息極まりありません。しかしながら、どこか憎めないというキャラクターです。悪霊と対峙しても、傲岸不遜な態度が変わらないという徹底ぶりが愉快なのです。
リゾートを訪れていたエレノア・ペリーと、コーディ・スタンフは人々が失踪する謎を解明しようと動き始めます・・・
エレノアの持っている手記が、過去のハワイ島の出来事との関連性を明らかにしていきます。現代の事件に示唆を与えるが如く、随所にこの手記の記述が挿入されるのです。手記の登場人物が、サムエル・クレメンズ(のちのマーク・トウェイン)。マーク・トウェインの作品に造詣が深ければ、もっと興味が持てたかもしれません。手記がキーアイテムであることは確かなのですが、エレノアを駆りたてる使命感が、これに起因するというのは納得し難いでしょうか。ハワイ島の伝説には、とても好奇心をくすぐられはするのですが。
物語は、火山灰が降り注ぐ中、悪霊たちが次々を人々を襲うというスリリングな展開です。ハラハラドキドキの、絶体絶命のピンチを迎えます。果して、エレノアとコーディは、謎を解き明かし、悪霊を封印することができるのでしょうか(そして、どうなるトランポ!)。クライマックスは、ちょっと意外な様相を呈するのですが、見せ場はたっぷりあります。
なお、本作品には『サマー・オブ・ナイト』、『夜の子供たち』のマイクもちらりと顔を見せてくれます。コディの初恋の人だったことが判明しますが、さて感動の再会は・・・
(注)読了したのは角川文庫の翻訳版『エデンの炎』で、 書影は原著のものを載せています。
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