【本の感想】金城一紀『SPEED』

金城一紀『SPEED』は、学歴社会における「生ける屍」、もしくは「殺しても死にそうにない」高校生、通称ゾンビーズ シリーズ『レヴォリューション No.3』『フライ,ダディ,フライ』に続く第三弾です。(リンクをクリックいただけると感想のページに移動します

シリーズものは、読者にとってもテンションを保つのが難しくはありますが、前作『フライ,ダディ,フライ』から勢いはそのまま。青春よもう一度、スカっとした時には、ゾンビーズが良し!。

本作品は、女子高生 岡本可奈子 16歳の冒険譚です。

平凡な日々を送っていた可奈子の日常は、家庭教師の女子大生 彩子の自殺によって一変します。彩子の死の真相を知っていると勘繰った何者かが、可奈子を襲ったのです。偶然その現場に居合わせたのは、南方、朴舜臣らおちこぼれ高校生ゾンビーズの面々。南方らは、可奈子と共に、真実を探ろうと活動を開始します・・・

ゾンビーズは、自らが弱きを助け強きを挫くのではなく、弱きが肉体的にも精神的にも力をつけるようサポートし、強きを挫くためのお膳立てを整えていくのです。ボディガード役の朴と可奈子のトレーニングシーンでは、『フライ、ダディ、フライ』の鈴木の想い出が重なるなど、シリーズのファンには嬉しい限り。南方、朴、アギーなど、シリーズキャラクターも健在です。本作品では、アギーのママが良い味を出してくれますね。

大学祭の裏側に隠された利権に辿り着く可奈子、そしてゾンビーズ。クライマックスは、恒例の(!)可奈子 V.S. 悪いヤツ 。本作品は、やっぱりベタな展開が待っているのですが、読者を痛快な気分にさせくれること請け合いの一冊です。

本作品では、夢を追いかけることの大切さが謳いあげられています。ここもベタなのですが、良いんですよねぇ。

 俺たちはいまだにどうやって世界を作り直せばいいのかなんて分かってないけど、とりあえず正しいと思えることをしながら、ほんの少しでも前に進んでいきたいんだ ・・・
 ひどい目にあったってかまわないよ。壊れた世界の中でなんにもしないでぼんやりしてるぐらいならね。

南方のこのセリフはぐっときて、泣けちゃいます。

ちなみに、本作品に続く『レヴォリューション No.0』は、『レヴォリューション No.3』の前日譚です。

本作品が原作の、秋重学 絵 漫画『SPEED』はこちら。

秋重学 絵 漫画『SPEED』
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