食と殺人がテーマのアンソロジーです。個々の作者の作品集や、他のアンソロジーでお目にかかれる作品はあるのですが、殆どが本書でしか読めません。日本には馴染みの薄い19世紀の作品からも選定されていて、隠れた…
【本の感想】ジャネット・ハッチングズ 編『EQMM90年代ベスト・ミステリ』
ジャネット・ハッチングズ 編『EQMM90年代ベスト・ミステリ』(1998年)は、伝統あるミステリー専門誌『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』に掲載された中から90年代を代表する作品を選定したアンソロジーです。とはいえ、日本では初お目見えの作家がちらほら。
翻訳版は、『双生児』と『夜汽車はバビロンへ』の二分冊です。
<『双生児』>
日本に翻訳作品が出版されている作家ばかりで、お馴染みの主人公が登場する短編が多数収録されている。通底するテーマはありませんが、水準は高いですね。
面白いのは、コリン・デクスター「ドードーは死んだ」、ナンシー・ピカード「口を閉ざす女」(次点は、ピーター・ラヴゼイ「クロンク婦人始末記」)
■「ドードーは死んだ」
雨の降る夕方、モース主任警部は、車に男を乗せました。その男、ワイズが語るのは、40年前のドードーとの恋物語。ワイズは、ドードーが存在しなかったことを知り、モースに相談をもちかけます・・・
■「口を閉ざす女」
連続殺人鬼に襲われた新興宗教団体の信者セアラ。FBI捜査官ジョセフの説得も虚しく、セアラは沈黙の誓いを守り、決して証言をしようとしませんでした・・・
その他の作家陣は以下の通りです。
ローレンス・ブロック/ジョイス・キャロル・オーツ/マーシャ・ミュラー/イアン・ランキン/ダグ・アリン/ヴァル・マクダーミド/エド・ゴーマン/ ウイリアム・バーンハート/ジョン・モーティマー
<『夜汽車はバビロンへ』>
『双生児』に比較すると、目を引く作品が多くありません。
中でも辛うじて面白いのは、キャロリン・G・ハート「追憶」、レジナルド・ヒル「この葬儀取りやめ」(次点は、ジョン・ハーヴェイ「無宿鳥」)
■「追憶」
女学生ジュディスが、ネックレス窃盗の容疑で逮捕されました。元新聞記者で、教師のヘンリー・Oは、捜査の過程で、このネックレスが、過去にも盗まれたことをつきとめます・・・
■「この葬儀取りやめ」
探偵シックススミスは、知人の葬儀で、いわくありげな棺を見かけます。ギリシャから輸送された事故死体なのですが・・・
その他の作家陣は以下の通りです。
ラルフ・マキナニー/アンドリュー・ヴァクス/ジャニス・ロウ/ジョージ・C・チェスブロ/ルース・レンデル/ジェレマイア・ヒーリイ/ケイト・ウィルヘイム/レイ・ブラッドベリ/ジャネット・ラピエール
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