【本の感想】S.I.ハヤカワ『思考と行動における言語』

S.I.ハヤカワ『思考と行動における言語』

S.I.ハヤカワ(Samuel Ichiye Hayakawa)『思考と行動における言語』(Language in Thought and Action)(1949年)は、コージブスキーの系譜たる一般意味論の書です。

本書の目的は、なんと、最終ページに記述されていて

われわれが話し手または聞き手として言語コミニュケーションの機構を使い、またそれに使われている形を示そうとしたもの

なのです。

言語学の意味論と、一般意味論は全く異なるため、予備知識なく読みすすめると(自分のように)混乱してしまうでしょう。冒頭から、「地図」は「現地」ではない、との原則が出てきます。地図=記号、現地=対象というのは、なんとなく分かるのですが、本質を知らないとちょっと落ち着きません。

最終章に本書のエッセンスが詰め込まれているため、まずはここから目を通した方が良いですね。言語学の意味論と思っていると、コミニュケーションについての記述で、違和感が大きくなり、理解するのに苦労しますから。前提を理解した上で、読み進めると、示唆に富む記述に目を惹かれるようになってきます。本書を読む環境(年齢とか、会社での地位とか、社会情勢とか)で感じ方が変わるでしょうから、折々の再読が本書を味わい深いものにしてくれるはずです。・・・おっと、本書では”断定”はいけないことになっていました。

今現時点での 自分が注目したのは、「第8章.感化的コミニュケーションの言語の記号的経験」。「他人の人生を書物の中で生きる」ことで、経験だけでは得られない、同胞との深い共感性を理解していく点です。なるほどねぇ。もうひとつは、牝牛ベッシーを例にとった「抽象のハシゴ」(物事を抽象レベルで捉える思考法です)。抽象化は様々なビジネスシーンで必要な活動ですが、ハシゴを行き来する(抽象化と具体化行き来する)という考え方は、意識としてありませんでした。

日本語はひたすら読み難いし、まるっと鵜呑みにできないところはあるのですが、一読はしておくべき書籍です。名著と言っても良いでしょう。