【本の感想】クレイトン・ロースン 他『天外消失』

本の感想 クレイトン・ロースン 他『天外消失』

クレイトン・ロースン 他『天外消失』は、<世界ミステリ全集>の最終巻『37の短編』(1972年)というアンソロジーから、14編を選んでまとめられたものだそうです。現在は他ではあまりお目にかかれない作品ばかりとのこと。なるほど、歴史に埋もれさせてしまうのは惜しい名品ばかりです。

クレイトン・ロースンの名作『天外消失』が読みたくて、本書を手にとったのですが、近頃読んだ中では”当たり”アンソロジーでした。

エドガー・ライス・バロウズ『ジャンル探偵ターザン』、メグレ警部登場作のジョルジュ・シムノン『殺し屋』といったシリーズものの短編から、リドル・ストーリーとして有名なフランク・R・ストックトン『女か虎か』、背筋を凍りつかせるフレドリック・ブラウン『後ろを見るな』といった著名な作品が収録されています。

ターザンものを活字で読むのは初めてですが、ジュブナイルという先入観を吹き飛ばす、ハードなストーリ展開に驚きました。いずれ、長編を読んでみましょう。

ベスト5を選ぶなら、ブレッド・ハリディ『死刑前夜』、クレイトン・ロースン『天外消失』、アーサー・ウイリアムズ『この手で人を殺してから』、イーヴリン・ウォー『ラヴディ氏の短い休暇』、C・B・ギルフォード『探偵作家は天国へ行ける』でしょうか。

■死刑前夜
メキシコの鉄道工事の現場へふらりとやってきた男サム。技師として働きたいという。ラジオからは、殺人犯がメキシコ国境方面へ逃亡したとのニュースが流れていた ・・・

「ヒッチコック劇場」として映像化されたとのことです。殺人犯とおぼしき男の奇妙な友情が描かれています。あっと驚くどんでん返しが秀逸です。

■天外消失
読心術者の予言どおり、キーラー判事が、警察の監視する中、電話室から忽然と消えた。警察が確認すると、通話中の受話器からは「手がかりが切れましたよ、警部補殿」の声が ・・・

人体消失トリックの名品である。ネタばらしまで、このトリックを見破ることができませんでした。無念 ・・・本作品に登場する奇術師探偵マリーニーものの長編『帽子から飛び出した死』も是非読んでみたいですね。

■この手で人を殺してから
わたしは訪ねてきた女性を殺害した。警察は、わたしを疑い、周辺の捜査を開始する。しかし、わたしには、絶対に捕まらない自信がある ・・・

いかにして犯罪の証拠を隠滅したかがテーマのミステリ。なんとも後味の悪い作品です。

■ラヴディ氏の短い休暇
州立精神病院のラヴディは、自身も患者でありあがら、他の入院患者の面倒をよくみていた。アンジェラは、父親が世話になったことに感謝し、ラヴディの外出を許可するよう働きかける ・・・

結末は予想できるけれど、不気味さはいささかも損ないません。本作品も読後感はよろしくはないのですが。

■探偵作家は天国へ行ける
探偵作家アリグザンダーは、自身の死因に納得がいかない。心臓麻痺と思っていたのが、殺人だったのだ。天使長ミカエルは、わめきちらすアリグザンダーのために、死亡するまでの一日を復活することを約束する ・・・

自分を殺した犯人を、自分が探偵するという趣向のミステリ。どこかで目にしたことのあるようなプロットですが、はてさて ・・・

その他の作家陣は以下のとおりです。

エリック・アンブラー/ジョン・D・マクドナルド/アル・ジェイムズ/ポール・アンダースン/スティーヴン・バー

なお、『37の短編』の残りの24作品うち12作品は、ハヤカワポケミス『五十一番目の密室』で読むことができます。

  • その他の海外ミステリアンソロジーの感想は関連記事をご覧ください。