【本の感想】ジョー・R・ランズデール『アイスマン』

本の感想 ジョー・R・ランズデール『アイスマン』

母親に死なれ、食い詰めたビルは、仲間と強盗を働きます。簡単なシゴトに思えたのですが、仲間の一人が殺人を犯し、逃走するはめになります。ビルは、警察の追跡を振り切るべく、フリークショーの一団の中に潜り込むのでした。 ・・・ ジョー・R・ランズデール(Joe R Lansdale)『アイスマン』(Freezerburn) は、こんな幕開けです。

著者の作品には、人種差別の悲しい事実が見え隠れしますが、本作品に登場する様々なフリークたちにも同様にそれを垣間見ることになります。著者は、いつものように、偏見にさらされる人々を描くだけで、怒りや憤りを直接的に表現してはいません。 著者の描写は、差別者の視点のように、どぎついんです。これが、息苦しくなるようなやるせなさを誘います。

当初、フリークたちを見下していた青年ビルでしたが、徐々に彼らとうちとけていきます。残念ながら、この気持ちの変化する過程が、上手く表現されていませんね。悪態をつきまくっていたビルがフリークたちと心をかよわせるまで、唐突に見えてしまうのです。

フリークショーの呼び物、氷漬けの男=アイスマンが、物語の象徴的な役割をはたしているのは分かります。しかしながら、決着のつけ方には、伏線が足りない分、薄っぺらな印象を残してしまいました。結局、本作品は青春小説?、ビルドゥングスロマン?少なくとも、 ホラーではありませんね(人の心の醜さはホラーといえるかも)。

ビルの親友で、メンターとなるフリークショーの一員 ドックマン(犬のような人間) コンラッドはいい味を出しています。それがゆえに残念です(というか、もったいない)。

著者の作品は、ハップ&レナード シリーズも、モンスタードライヴイン シリーズも、すっかり翻訳されなくなってしまいました。2009年発売の傑作短編集『現代短篇の名手たち4 ババ・ホ・テップ』からぶっつり。マニアなファンはいるのに。・・・少なくとも、ここに1名。