フリークショーの一団に逃げ込んだ強盗犯の物語です。著者は、偏見に晒される人々を描くだけで、それに対する怒りや憤りを直接的に表現してはいません。やるせなさを誘いますが、氷漬けの男=アイスマンの存在そのも…
【本の感想】ジョー・R・ランズデール『サンセット・ヒート』
近頃、めっきりジョー・R・ランズデール(Joe R Lansdale)の翻訳本を見なくなりました。かなり前だけれど某出版社で、希望を募って一定数に達したら翻訳出版!、という企画はあったものの、こちらもポシャってしまいました。ネッド・ザ・シール三部作って何?と、根強いファンはいると思うのだけれど・・・(そんなにファンなら原著を読めって話だよね)
『サンセット・ヒート』(Sunset and Sawdust)(2004年)は、大恐慌時代のテキサスが舞台の活劇です。
治安官に任命されたサンセットは、前任者の夫ピーターが扱った、乳幼児の遺棄事件を調べはじめます。ほどなくして、油まみれになり腹を裂かれた女性の遺体が発見され、彼女と因縁のあるサンセットが疑われることに・・・
物語は、大竜巻が荒れ狂う最中、サンセットが、暴力夫ピーターの頭を撃ち抜く場面から始まります。町の有力者で、ピーターの母親マリリンは、サンセットへの憎しみと愛情が交差する中、サンセットを治安官に推すのですが、このあたりの展開が実に上手くできています。夫を殺害し、治安官となったものの、夫の愛人殺害の疑いをかけられ、娘のカレンはサンセットが好意をよせる男の子を妊娠し・・・ と、問題山積み。しかし、全くジメっとしていません。むしろ、火のような赤毛に拳銃一丁をぶらさげ闊歩する姿は、バイタリティーさえ感じるでしょう。それだけに、時折見せる女性らしさにホロっとくるのですが。
登場人物は、皆、個性的に描かれていています。特に敵役のマクブライドと、ツーは、ランズデールらしいホラーばりの不気味さです。いくつか痛快な場面があるし(リーとヒルビリーの対決シーンがお気に入り)、気の利いたセリフも多いので、中弛みすることなく読了できます。是非、映画化して欲しい作品ですね。ただ、ラストは、ウェスタン調の決闘シーンで、ちょっと、拍子抜けかも。
原題より、日本語タイトル『サンセット・ヒート』の方が、内容を良く表しています。これもあまり売れなかったのかなぁ・・・
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