週末里親として施設の少女を預かる夫婦の、一風変わった家族の物語です。夫婦や親子の常識って、実は息苦しいものだというのが、本作品のテーマ。本作品の一過性の家族は、家族という存在を所有し続けないという意味…
【本の感想】桂望実『嫌な女』
桂望実『嫌な女』は、縁戚の結婚詐欺師の女 小谷夏子に翻弄され続けた女性弁護士 石田徹子の物語です。徹子は、弁護士に成り立ての二十代から、引退し後進の良き相談相手になっている七十代まで、同い年の詐欺師の起こす様々な事件に関わります。
事件を起こす度に、徹子へ弁護をすがる夏子。おいおい、またかよ。でも何故か徹子は、夏子を邪慳にできません。
この嫌な女(とういうかダメな女)の人となりは、徹子や被害者の周辺から語られるだけです。間接的にしか夏子を登場させずに、キャラクターを作りあげていく手法が面白いですね。果たして夏子はどのような女なのか、と想像が膨らみます。
当初、嫌悪しかなかった徹子の感情は、時を経て自身が成し得なかった事への淡い羨望のようなものへと揺れ動いていきます。鋼鉄の如きエリート弁護士の心を揺さぶるとは、徹子にとって夏子は最強に嫌な女なのです。
ダメ女だけれど憎めない。だから結婚詐欺師を続けられるのでしょう。読み進めていくうちに夏子がチャーミングに見えてくるから不思議です。おそらく、自分は、ダメ女に騙されるクチですね。奪われるほどの財産がなくて良かった・・・
不器用で堅物で孤独な徹子。自由奔放な嫌な女との関わりが、年齢と共に徹子の精神的な成長を促していきます。どちらがより良い人生なんて言えない。自分らしく生きるのが、正解なのです。結局のところ、本作品は、人生のあり方を問うていのでしょう。
世間で友情と呼ばれているものは、その場限りの優しさを見せ合う関係をさす。
痛烈ですが、同意です。
本作品が原作の、2016年 NHKプレミアム 黒木瞳、鈴木保奈美 出演 ドラマ『嫌な女』はこちら。
本作品が原作の、 2016年公開 黒木瞳監督(初監督!)、吉田羊、木村佳乃 出演 映画『嫌な女』はこちら。
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