【本の感想】エドワード・D・ホック『ホックと13人の仲間たち』

エドワード・D・ホック『ホックと13人の仲間たち』NO IMAGE

どこかで読んだ記憶がありますが、エドワード・D・ホックは、短編小説だけで生計を立てていた稀有なミステリ作家だとか。日本国内で短編集が多く翻訳されており、アンソロジーにも掲載されているので、翻訳小説を好んで読む方にはお馴染みでしょう。自分は、著者の全ての作品を読んでいるわけではありませんが、エドガー賞を受賞した「長方形の部屋」のように、これは!という短編もものしています。たまたま手に取ったアンソロジーで著者の作品が掲載されていると、テンションが上がります。それほど抜群の安定感を持ってるのです。

著者は、サム・ホーソン、ニック・ヴェルヴェット、サイモン・アークと、多くのシリーズキャラクターを生み出しました。創元推理文庫では、全集になっていますね。

エドワード・D・ホック『ホックと13人の仲間たち』は、著者のシリーズキャラクターが13人を集めた短編集です。

先の3名の他、コムピュータ検察局、レオポルド警部は、その昔、翻訳がなされています。本作品集では、残りの7名にお初にお目にかかりました。こう並べてみると、作風はキャラ先行型と言えますか。物語が、キャラクターを際立たせるためにあるような印象を受けます。これは!という作品がないのが残念です。シリーズキャラクターは、シリーズを読み通してこそ面白さを味わえるのかもしれませんね。

以下、自分が初めましての7人の登場作品をさらりと紹介しましょう。

■<西部探偵ベン・スノウ>「ストーリーヴィルのリッパー」
死期の迫った富豪アーチャー・キングズマンが、ベン・スノウに依頼したのは、6年間も絶縁状態となっているベスを連れ戻すこと。ベスの居場所と思しきストーリーヴィルにはジャック・ザ・リッパーの如き殺人者が出没していたのでした・・・

頑なに父親との面会を拒むベス。そのベスの周辺に起きる殺人事件を、ベンが見事に解決します。ビリー・ザ・キッドの生まれ代りと噂されるベンの西部探偵の由縁は、拳銃さばきの妙ですね。

■<ポール・タワー>「ロリポップ警官
小学校を巡回中のポール・タワー。いじめ問題に関わっているうちに、ポールの警察車両の中に男の刺殺死体が。その死体は、いじめをしていた少年たちのハーバート・クウィンでした・・・

ロリポップ(キャンディーね)を持って、幼稚園や小学校を巡回するポール・タワー巡査が、事件を解決します。事故で妻と息子を亡くしているという設定で、ロリポップはかえって悲哀を感じさせます。

■<デイヴィッド・ヌーン神父>「技能ゲイム」
聖モニカ協会へ何者かから爆破予告の電話がきました。思い止まるよう説得を試みるデイヴィッド・ヌーン神父。しかし、その男は全く聞く耳を持ちません。警察の協力でトマス・ゼロウが浮かび上がりますが・・・

爆破予告当日、デイヴィッド・ヌーンが、顔も知らぬトマス・ゼロウを推理で突き止めます。神父のモデルは、ブラウン神父だとか。なるほど、と言いたいことこですが、ブラウン神父ものは一度も読んだことがありません。

■<インターポール>「第三者の使者
太陽教団の二人の使者が、パリとイスタンブール間の飛行機内で忽然と姿を消しました。使者たちは教団の資金を持って失踪したのです。インタポール(国際刑事警察機構)のセバスチャン・ブルーが捜査に乗り出し、太陽教団を訪れます・・・

セバスチャン・ブルーは、元嫁が同僚と結婚して、スコットランド・ヤードにいづらくなりインタポールへ転職したという設定です。翻訳部のブロンド美人 ローラ・シャルムとどうなる?がシリーズの見所でしょうか。本作品の事件は、どうってことはありません。

■<ダブルCマン/ジェフリー・ランド>「ランド危機一髪
TV俳優のバートン・オニールが、外交用暗号を盗もうとしている!イギリス諜報部ジェフリー・ランドは、オニールのスパイ活動を疑い網を張っていましたが、何者かによってオニールは銃殺されてしまうのでした・・・

「知りすぎた男」ならぬ、「知らなすぎた男」というのがポイント。本作品は、捻りの効いたエスピオナージとなっています。

■<私立探偵アル・ダーラン>「火のないところに
私立探偵アル・ダーランに持ち込まれたウィルマ―・ブラウズからの依頼。それは、美術品泥棒ローラ・フェインから亡くなった友人のコレクションを守って欲しいというものでした。ダーランは、ローラ・フェインの居所を突き止めて乗り込みます・・・

老探偵が、渋々受けた仕事は、とんでもい結末に。ハードボイルドな作品ですね。

■<詐欺師ユリシーズ・S・バード>「百万ドル宝石泥棒
サミュエル・ロングマンは、ドクター・ハガ―から宿泊中のホテルに、ユリシーズ・S・バードの姿を見かけたと告げられます。有名な詐欺師のバードが、どうやらロングマンのお宝を狙っているらしい。ロングマンは警戒をするのですが・・・

ユリシーズ・S・バードは、悪党から金をだまし取る詐欺師という設定です。発表当時は新鮮だったのかもしれませんね。日本なら黒丸の漫画『クロサギ』ですね。本作品の仕掛けは想像がつきますが、十分に愉しめます。

■<秘密調査員ハリー・ポンダー>「危険な座
カスピアに滞在中の大使館員ハリー・ポンダーが、外交官クラブのプールから誘拐されました。犯人グループのリーダー ハマダンは、刑務所に収監されている三人の反逆軍指導者との交換を、アメリカ政府に要求します・・・

本作品も諜報員ものです。意外な結末ではあるものの、あぁ、このパターンね、という感想を持ってしまいました。人質交換というスリリングさはあるのですが。

おお!今日は、クリスマスイヴか。どうにも、自粛ムードでパッとしませんね。こういう時は。読書だねぇ・・・。

(注)NO IMAGE画像をクリックするとAmazonのページに移動します。

  • その他のエドワード・D・ホック 作品の感想は関連記事をご覧下さい。